2020年11月17日火曜日

三階滝沢・中ノ沢 (沢登り) 後半:中ノ沢遡行

 西伊豆町、仁科川源流にある大滝川の中ノ沢を遡行した記録です。

お隣の三階滝沢を下降した直後に引き続き遡行しました。

ここに来る前に三階滝沢を下降した記録はこちらです。


三階滝沢右岸に沿って続く径跡が登っていく中ノ沢の標高420mくらいの左岸には、その中ノ沢沿いにも歩道の跡と思しきものが上流へと伸びています。

当初は楽をしようとして、その径跡を登りましたが、数十メートル先で左岸の尾根へと登っていってしまうので、中ノ沢に降りて遡行を開始します。

しかし、沢登りを始めるとすぐに、径跡が登って行ってしまったはずの左岸には、明らかに通路を支えているように見える石垣が頻繁にあらわれます。

楽をして径を歩きたい気がしますが、どこへ行くものかもわからないものを行ったり来たりするのも面倒なので、我慢してそのまま沢登りを続けることにします。


遡行を続けると案の定、左岸上部の径跡が接近してきて、ついに沢まで降りてきてしまいました。

径が降りてきたのは、すぐ上に12m滝が見えるところです。
ちなみに、中ノ沢はここに至るまでこれといった見どころは全くなく、比較的歩きやすい平凡な沢歩きでした。

最初の12m滝は、流れの右側を登れそうですが、寒いこの時期はトポ通りに右岸から巻いていきます。
巻き径は明瞭ではありませんが、ガイドブック通り小さな沢型から植林と自然林の境界を狙い、歩けるところを登っていくと、落ち口の少し先に降りることができました。

すぐに次の5m「く」の字滝となります。

写真で見るイメージ通りに流れ右側の岩を歩いて、

屈曲するところからは左に乗り換えます。
上から見下ろすとこんな感じ↓で登ります。

それにしても、この沢は渓相がすっきりしていて歩行を妨害する浮石やブッシュがなく、誰かが整備してくれているのかと思うほど歩きやすいです。

少し進むと、奥に滝がある淵が現れます。
ここもトポ通りに淵の右岸をほんの少しへつったところから這い上がります。

淵を越えた先を左にカーブすると、8mの滝となります。
ここも濡れることを厭わなければ直登できそうですが、いったん左岸斜面を登り、途中の緩いバンドから滝に近づくという最も安易な選択とします。

このバンドを、

こんな感じで歩いて落ち口の右に出ました。

8m滝の少し上で入ってくるのは540mの右岸枝沢でしょうか。

沢は一層穏やかとなり、ところどころで天城特有の苔むした光景が見られるようになってきます。

ただ、この少しの間の緊張感の緩みが要注意です。

次に出てくる2段の滝は、左岸から沢にハングしてきているテーブル状の大きな岩盤の奥にあります。

下の写真は滝を右岸側から写したものですが、写真左側に滝があり、右から左へと遡行していきます。
帰ってきた今、よくよく見ると、岩盤の奥の林の端に歩道が通っているように見えなくもありません。

そんなことを知らない自分は、左岸の岩屋の下をくぐって一段目を通過し、二段目の下まで来ると、

流れの中はヌメって登れない2段目の右側は、クラックの岩壁でぐるりと囲まれています。

そして、唯一弱点と思われる、流れの脇にある太ももくらいのクラックに挟まれながらその上のテラスに出ますが....
ご覧の通り、半分くらい黒光りしているこのクラックの中はドロ交じりのぬめぬめ状態で不愉快極まりありません。

そして、登った先で歩いて行けると思っていたテラスは、上から見ると御覧の通り、腐った落ち葉がバナナの皮のようにヌメっていました。
ここ、つるりと滑って4mくらい落ちると、さぞ痛いだろうな。

ヒヤヒヤしながら滝上まで登り振り返ると、ハング岩の上に広がる緩い傾斜地の中には、ゆるりと歩けそうな獣道のようなものが続いており、今の緊張とはあまりに異なったのんびりとした風景が望めます。

なんだかバカみたいなことをしている気分になりつつ先へ進むと、すぐにユルい8m滝となります。
この滝は下の3分の1くらいは普通に歩いて登れ、その上は児童公園の滑り台のような緩い傾斜となっています。

さすがに、これはさっきのよりは簡単だろうと思い、上段の滑り台に取りついてみますが、最後に少し傾斜が緩くなる部分の宙に浮く水流が、どういうわけか上から滑ってきたときの自分の軌道を彷彿させます。(勝手なイメージなのですが、)

傾斜が緩いのは緩いのですが、外傾したスタンスしかなく、やはり要所の足場に溜まったヌメヌメの落ち葉が曲者です。
しかもこの落ち葉、上に行くほど増えてきます。
しかし、この緊張感は何だろう。
滑り落ちても下はプールなので、痛い目にあうことはないはずなので、緊張の原因は5℃以下の釜の中から這い上がることができるかどうかの方ですね。

登りついた落ち口の両側には、林の中からやってくる踏み跡がありました。
ここもおそらく、簡単に巻いてこれると思われます。

そして沢は、またもや緊張感を奪うために仕掛けて来ます。

典型的なナメの先に続く日本庭園風の流れの奥に次の滝が見えてきました。

これはさすがに、流れの右側がホールド豊富で、ノーハンドでも行けそうなくらいですね。

ところが、あれ?
いざ登り始めるとそうでもないみたいです。
実力が落ちているのか、調子がくるってきたのか、それとも本当に微妙なのか。
なんかしっくりきません。それまで滑るのは腐った落ち葉だけだろうと思ってきたのですが、カラカラに乾燥した落ち葉やコケもなんか怪しく感じられてきます。
ちなみにこの滝は、上の写真のように、左岸から歩いて簡単に巻けてしまいます。

そしてその上にはナメの奥にまた次の滝が...

さすがに、これは登れませんね。
さっさと巻きましょう。

振り返ると少し下の右岸に巻き径のようなものを発見。
県道目指してどんどん登ります。

しかしここも、あれ?
だんだん不明瞭になり、気が付くと厳しいルンゼに導かれてしまいました。

何とかルンゼ右側のリッジに逃げますが、ここも脆いザレの上に落ち葉が堆積し、足を置いてみないと地面がどうなっているかがわからない、滑りやすい急斜面です。
安定した木が生えているのですが、間隔が10メートルほど離れており、次の木にしがみつくまでの間が絶妙な距離です。
また、ロープで下降したときに進退窮まるリスクと、登り続ける県道までの距離も微妙で...

結局登るごとに徐々に緩くなっている斜面を県道まで登りましたが、帰路に歩く県道が中ノ沢に架かる滝見橋を渡った先、つまり中ノ沢の左岸尾根に、立派な歩道の入口がありました。
なんと、登ってきた劣悪な右岸の反対側には歩道が完備されているみたいです。
しかもここ、朝クルマで前を通りました。
この歩道。もしかしたら、中ノ沢を遡行中に何回か見かけた左岸の踏跡に続いている可能性もありますね。
だとすると、さっき下降してきた三階滝沢と同様に、この沢も並走する歩道で下っていけるのかしら?
もしそうだとしたら、ここから下っていくと先ほど下降した三階滝沢と同じ感覚で歩けてしまうのではないでしょうか。

舗装された県道を10分少々行くと、三階滝沢へと下るときにクルマを止めた路肩に到着します。
なんだか最後の2割くらいで、わざわざしなくてもよいことばかりを繰り返し、かなり疲れました。
本当は大滝や歩道で行ける周辺の滝を見物しようかとも思っていたのですが、このまま家路につくことにしました。

●本日の反省
・巻き径・作業道を使うのならちゃんと使おう。
最終盤に連続して4回、緊張を強いられる場面に遭遇したが、全て身近に回避ルートがあり、わざわざリスクの中に入り込む必要のない場所だったところを、安易に選択した結果としてそうなってしまった。
特に一番危険を感じた最後の県道への巻きは、それまで最低でも3回、反対側の左岸に歩道が続くのを目にしており、誰もが深く考えずとも左岸を巻く方が簡単であると認識してしかるべきところを、その可能性すら感じずに迷い入ってしまった。
まあ、思い起こせばこのコースは、廃道とはいえスタートからほぼ一貫して歩道が並走しており、沢登りとしてはかなり緊張感に欠けた展開が最後まで続くため、長い道程の途中で緊張がゆるんだり、ちょっと何かしてみたくなる誘惑にかられることは否定できない。
ただ一方で、歩いている歩道は単なる登山道ではなく、ハイキングとして容認できない難度に身を置いていることを常に念頭に置き、心の準備が中途半端となるリスクには近づかない意識が必要だと思う。


●2020年11月15日(日)

県道59号線三階本谷橋(8:35)→三階滝(8:45)→三階滝沢下降→三方滝(10:40)→中ノ沢遡行→二層ハング滝(12:30)→県道(滝見橋;13:30)

同日直前に遡行した三階滝沢の記録はこちら



2020年11月16日月曜日

三階滝沢・中ノ沢 (沢登り) 前半:三階滝沢下降

 伊豆山稜線の近くにある大滝川(仁科川水系)の支流にある”三階滝”は、踊子歩道の旧天城トンネル付近にある”二階滝”と名前の響きが似ているため、今まで天城にあるものだと錯覚していましたが、天城山脈の西側、西伊豆町の猫越岳の南側にありました。

ちなみに、安達太良山を流れる湯川にも同名の滝がありますが、こちらは遠く離れたところにあるため勘違いすることはありませんね。

WEBで”伊豆”の”沢登り”を検索すると、三方滝付近で分岐する中ノ沢と三階滝沢の記録が一緒に登場するので、古くから地元の愛好家に遡行(または下降)されているものと思われます。でも、記載内容からいまひとつ難度が読み取れず、出かけるきっかけが見つけられずにいましたが、2020年の夏に発刊された沢登りのガイドブック(「新版東京起点沢登ルート100」山と渓谷社)に同沢のガイドが信頼できる内容で掲載されたのを機会に、シーズンオフとなりつつある11月に出かけてみました。


仁科川支流の大滝川源流にある三階滝沢と中ノ沢は、三方滝付近で二手に分かれて猫越峠に向けて並流しており、沢登りの対象は県道59号線(伊東西伊豆線;西伊豆町松崎で駿河湾に注ぐ仁科川に沿って走る道路)の下側となります。

首都圏から行く場合は、伊豆縦貫道・各種有料道路を経由して月ヶ瀬I.C.から何らかの方法で仁科峠まで登り、松崎に向けて下っていきます。

西天城高原で県道410号線と分岐してからは林道のように道が狭くなりますが、舗装が途切れることはなく、遡行対象の沢に架かる2つの橋(滝見橋と三階本谷橋)を渡って200mほど下ると左(東)側の路側に退避場所がでてきます。

そこにクルマを止めると、道路の反対側に”三階滝沢歩道”と書いてある表示板があり、ここが三階滝への入口となります。

2つの沢はお好みでどちらを下っても/登ってもよく、今回は行きませんでしたが、下流の大滝へ行く歩道を使用すれば、両方を登る(または下る)ことも可能みたいです。

今回はガイドブックのおすすめに従い、三階滝沢を下降してから中ノ沢を遡行して県道まで登り、道路を歩いてここまで戻ってくることとし、先ずは三階滝沢を下降する記録から開始します。
後半に遡行した中ノ沢の記録はこちらのページに記載してあります。

というわけで、さっそく道路脇の表示板から植林の中の径を下っていきます。

道路から三階滝までは10分足らずで到着します。
最後の滝手前で横の岩壁が崩れた瓦礫で径がなくなっていますが、沢登りのゴーロ歩きと大差ありません。

滝の下に到着すると、なかなかの水量を落とす立派な滝です。

時折県道を走り抜けるバイクのエンジン音を聞きながら沢支度をして、さっそく下っていくことにします。

植林の中を流れる沢は多少荒れ気味ですが、特に困難な場所はなく、5分ほどで小滝が現れ始めます。

最初の滝の右岸側にはトラロープが張ってあったので、使用しなくとも下降できそうではありますが、せっかくなのでありがたく使わせていただきます。

以降、中ノ沢出会いまでは右岸に歩道の跡が続いていました。
ただ、ちゃんと歩けるかどうかは歩く人によりますので、以降の写真のところどころで状況を写していきたいと思います。

横にトラロープが張ってあった滝も含めて、先ずは3つの小滝が数十メートル間隔で続きます。
下の写真は3つ目の小滝で、左岸の岩をクライムダウンしましたが、基本的に全ての滝を右岸の径跡でパスすることができます。

3つ目の滝から下は谷が一旦深くなるので、沢沿いの植林の中の径跡を下ります。

しかし、立派な径跡を漫然と辿ってしまうと、藪越しに滝を見下ろしながら全て通過してしまうことになるので、所々で沢に降りて見物していくことにします。

この滝はどんな感じなのか近寄ってみましょう。

うまいことルートを選べばクライムダウンできたかもしれませんね。
遡行する場合は楽しく登れるような気がします。

意外なほど小滝が連続します。

径もあるので、使えばどんどん行程がはかどります。 かね??

一旦、人の生活感が感じられそうな苔むした河原となりますが、すぐに次のゴルジュとなります。

滝が連続するところにはナメもセットで用意されており、飽きることがありません。

平易なところは径跡に頼らず、なるべく沢の脇を行くようにしましたが、多少足が濡れるところはあるものの、浮石が少なく歩きやすい河原が続きます。

突然、歩いてくださいと言いたげな平らな岩盤が右岸に登場するので、導かれて上を歩きます。

なんと、岩盤の上には小さなガードレール支柱のような杭が等間隔で打ってありました。
金属のポールはどれも根元から下流側に倒されていますが、この杭がまっすぐ立っていたころ、ここは誰が何のために訪れていたのでしょうか。

支柱が埋まっていた岩盤を下流側から見るとこんな感じです。
この写真を撮ったすぐ横の右岸には、戸建て住宅が数件建てられるくらいの平地があり、炭焼きの跡のような石積みが残っていました。

炭焼き?の平地から下は、径跡がさらに明瞭となり、割とすぐ先で沢が右曲するところからナメとなります。
そして右岸の歩道跡は流れのすぐ脇を桟道のように並走しはじめます。(腐っているのでナメを下った方が楽ですが...)

ナメはすぐに滝となって落ちていきますので、径跡に戻って滝の下に出ることにします。

降り立ったのはガイドブックの写真にも掲載されている6mのナメ滝でした。

6mナメ滝の下も2つほどナメ滝が連続しています。
これはすぐ下にある滝。

次の滝は腐った桟道で下ります。
木は朽ちていますが、その下にある基本構造は工事用の鉄パイプなので、パイプが通っているであろうところを狙って足を置くと安定して歩けました。

桟道の上からの眺めはこんな感じ、木が朽ちてさえいなければ遊歩道気分となります。
あ、当然このコース全て遊歩道や登山道ではありませんので、沢登り同様自己責任でお願いしますね。

そして最後は、直接降りられそうにない大きな滝がでてきますので、遊歩道(跡)は落ち口の横から右岸の林の中に入り下っていきます。

林の中を下っていくと沢にでますが、この沢が直下で三階滝沢と分岐する中ノ沢です。
この沢を登って帰ることとなりますが、すぐ下流に橋が架かっているので一旦下ってみます。

橋は軌道跡だったみたいで、そのまま鉱山跡と思われるトンネルの跡に続いていました。

鉱山跡から下を見ると左岸から滝が落ちています。

この滝が今まで下降してきた三階滝沢です。
上に登って先ほど落ち口の横を通った三方滝を見物していくことにしましょう。
出合の滝の上へは、左脇にある足場を登って簡単に行くことができます。

足場を登ると、そこは短いナメとなっており、すぐ先に大きな三方滝が登場しました。

20mはあるでしょうか。
今回の2つの沢で最も大きく水量も多い滝でした。
もう少し近寄ってみましょう。

まさに前半のフィナーレとなる三方滝を見た後は、鉱山跡の前を戻って左俣である中ノ沢を遡行します。

続く中ノ沢遡行の記録はこちら。

●2020年11月15日(日)

県道59号線三階本谷橋(8:35)→三階滝(8:45)→三階滝沢下降→三方滝(10:40)→中ノ沢遡行→二層ハング滝(12:30)→県道(滝見橋;13:30)




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