2020年10月31日土曜日

大菩薩沢 (源流部のみ;沢登り)

 秋も本格化してきた10月の最終週に、大菩薩沢の源流に行ってきました。

大菩薩峠付近の石丸峠を水源として、長峰(ながね)を挟んで土室川と並流しながらその南側を流れる大菩薩沢は、葛野川の最源流で、葛野川地下発電所付近でマミエ沢(マシュ沢)と合流してからは小金沢と呼ばれて、2005年の深城ダム完成により誕生した”ふかしろ湖”に流入しています。

小金沢と共に関東地方を代表する茗渓とされており、遡行の難度も相応で入渓者を選びますが、水量と谷の深さが減る源流部は中級者未満でも遡行可能なレベルだということで、平易な部分のみを対象とすることにします。



ここは甲斐大和から上日川峠へと向かう林道大菩薩初鹿野線の小屋平付近です。

写真の右に続く道路の奥が小屋平のバス停で、その先2km足らずで上日川峠となるこの路側スペースにクルマを停めて出発です。


小屋平バス停の脇にある登山口から、縦走路を越えて牛ノ寝通りと長峰を下る長い長いアプローチが始まります。
石丸峠へ向かう登山道は、その中間地点ほどで林道を150mくらい通ります。

林道から先は傾斜がぐっと緩くなり、視界が開けてくるとまもなく石丸峠に到着します。

天気も視界も最高で、日差しと登って来た発熱で出発時の凍えるような寒さも解消です。

石丸峠で天狗棚方面へと右折。

すぐにでてくる牛ノ寝通りへの分岐を左へ入ります。

森の中の稜線を少々歩くと、立派な標識がでてくるので、道跡不明瞭通行注意と書かれている長峰へと右に入ります。

ここからふかしろ湖の上流まで下っていく長峰は、山と高原地図(昭文社)では破線(難路)で記載されていますが、出だしは笹の中に微かな踏み跡が続きます。

ところどころピンクテープが付いてはいるものの、頼りとして使うには数が少なく、次第に明瞭となる踏み跡を辿ることとなりますが、これが網目状に稜線を徘徊しており、少々曲者です。
実際に尾根がなだらかとなる標高1700m付近で、一番濃いと感じた踏み跡に、北側の支尾根に誘い出されてしまいました。


ただ、忠実に尾根を下っていく分には、迷っても大事に至ることはないと思います。
標高1550mほどから徐々に植林が混じって来て、間伐が入るようになると明瞭な作業径があらわれます。

せっかく出て来た歩きやすい作業径ですが、標高1400m少し上くらいから沢へと降りるべく、南東向きの支尾根に乗換えます。
その支尾根も、100mほど下降すると切り返しの作業径の跡があらわれて、沢まで続きます。

ようやくたどり着いた大菩薩沢の標高1170m付近は、平凡な川原が続いていました。
少しの間、沢支度をせずに靴のまま川原を歩いて行きます。

そして、200mほど川原を歩いた、正面左岸から枝沢が入るここで河原がなくたったため、沢装備に変更しました。

渓流シューズで平凡な沢を歩いて足慣らしをします。

沢支度をしてから200mも行かないうちに右岸からマミエ入り沢が出合う二俣となりました。
右俣の大菩薩沢へと入ります。

徐々に両岸の壁が迫って来て、巨岩や小滝が登場するようになりますが、難しいものはありません。

少しの間歩くと、正面が行き止まりとなるように見える岩壁が登場します。

近寄ると、沢は壁の左側から滝となって落ちてきています。

6mの滝が二段連続して落ちていました。
前衛の2mと最上段の3mも数えると4段の滝です。

この滝は、上段の傾斜が急で手掛かりも乏しいことから一人では登ることができず、右壁から巻くこととなります。
ルンゼの真下にあるガレから取りついて、ルンゼの中を行けるだけ行き、閉塞感が高まって足場がなくなるあたりから左側の壁に逃げましたが、この巻きがこの沢唯一最大の核心部でした。

先ずは登れなかった滝を左に見ながらガレを登ります。

そして、ルンゼ内を行き詰ったところから左の壁へ逃げますが、この壁の上に薄く張り付いた泥と落ち葉の不安定さが思っていた以上に悪く感じました。

いや、実際はそんなに悪くないのかもしれません。
悪く感じたのは、振り返った時のこの視覚効果かもしれませんね。
スリップすると、這い出てきたルンゼ(写真左側の溝)まで滑っていって、さらに溝の中を落ち、登り始めたところまでリセット必至でしょうか。

とりあえずは、あの溝に落ちたくないな。
ただ、ここまで来ると傾斜がだいぶ緩くなり、細いものの手がかりとなる安定した木の根がでてくるようになります。

やっとのことで上まで到着。
手前の尖った岩を抱きかかえるようにして越えて、身近となった安定した木につかまって一息つきました。

たどり着いた木から懸垂下降で沢に戻ります。
ロープは15mあればOK。もっと近い木からすぐに降りたい場合は、倍くらいの長さがあればいいでしょう。

4段の滝の上は、ナメと滑滝が連続する、この沢の源流部で最も美しいところです。

本来であればナメを快適に登っていくところなのでしょうが、岩盤に堆積した落ち葉が濡れて、バナナの皮のように滑ります。

なので、まるで気が抜けません。
この状態で傾斜が急なあの滝が滑ったらとても厄介だと思い、恐る恐る近付くと、なんと傾斜が急で水が流れているところには腐った落ち葉は残っておらず、思いのほか滑らずに何とか通過できました。

しかし、次なる難敵がやって来ます。
壁に挟まれたこの滑滝は、どちらの壁も手掛かりが少なそうです。
右岸上部の外傾した細いテラスを使って巻くこともできそうですが、途中で失敗するとさぞ悲惨なことになりそうです。

恐る恐る近寄ってみると、やはり釜は相当深く、浅いところでも腰まではありそうです。

実はこの滝、帰って来てからわかったのですが、ガイドブック「東京起点沢登りルート100」(山と渓谷社)の90ページに写真が載っている滝で、その写真では右岸側から釜に入り始めた人がヘソくらいまで水に浸かっているのが写っています。
恐らくあの人はその先で首近くまで浸かったことでしょう。
今日の水温でそんなことをしたら、新たに別の災難が降りかかってきそうで、何としても避けたいところです。
仕方がないので、先ずは断続的に3㎝幅くらいのスタンスがある右岸をヘツってみることにしますが、ホールドが全てアンダー側にあり、それが進むにつれて鈍角となって、ちょうど写真に赤く窪んで写っているあたりで完全に行き詰ってしまいました。
命辛々引き返して考え直していると、ハングっぽい左岸側の水中にスタンスらしきものを発見。

その水中スタンスを最大限活用して、被ってはいるものの要所にカチホールドがある左岸側を必死でヘツります。
ここまで来ればもう安心。

滑滝の飛沫がヒザくらいまでかかりますが、水没することに比べればはるかにマシです。

これで難所は全てクリア。
ふう。
水温が低くなければ何でもないところですが....

あとは残ったナメを快適に歩いて核心部を終了します。

残りの大半はガレと倒木の消化です。

と思っていたら、ヘツれない釜が登場。
小さいですが、中に落ちた時のインパクトは先ほどの滑滝の釜に匹敵しそうです。
右岸から簡単に巻けるので、安易に巻いたら沢に戻れなくなりました。
本日2回目の懸垂は、落差3mでした。

そして、ガレ沢の奥に、また高い滝が見えてきました。

この沢最後の滝となる二段10mは、左岸のザレ斜面から簡単に巻くことができます。

ザレたところが多少滑りやすいですが、これまでに通過してきた場所と比較すると、大きな緊張感はありません。


これは1520m右岸枝沢。

いや、1520m枝沢はこっちだったっけな?

二段10m滝より、単調なガレ沢を登ること標高差約350mの標高1750m付近で、左岸に枯れた沢が入るここで、沢装備を解除します。

履き替えた運動靴でこの枯沢を登り、稜線を目指します。

出合から見上げることができた左カーブでちょっとだけザレますが、その距離はほんのわずかでした。

あとは樺の木が点在する笹原を登っていきます。

木立が密になってくると稜線が目前となり、もうすぐ登山道です。

牛ノ寝通りを僅かに歩いて、縦走路に出てきました。

石丸峠で大休止です。

あとは往路の登山道を下って、バス停間近の駐車場所まで戻りました。

同じ沢の下流にある小金沢本谷の記録はこちら

●2020年10月29日(木)

小屋平バス停(林道大菩薩初鹿野線;7:55)→石丸峠(8:55)

→牛ノ寝通登山道→長峰分岐(9:10)→長峰下降

→標高1400mより南東尾根下降

→大菩薩沢標高1170m(入渓;10:50)→大菩薩沢遡行

→4段の滝(11:30~12:05)→奥二俣(13:20)

→最終二俣(14:00)→石丸峠(15:00~15:15)

→小屋平(16:00)




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