2020年12月20日日曜日

新崎川(大杉沢・深沢・六方ノ滝; 沢登り)

暖冬で雪もほとんど降らなかった昨年とは打って変わり、12月半ばから突然寒波がやってきた2020年。

師走前半は暖かかったので、また昨年同様冬は来ないかと油断していたら、閉鎖された関越道に3日間缶詰となる騒ぎも発生するほどの状況となり、高い山には行けなくなってしまいましたので、県内で沢納めに出かけることにしました。


神奈川県最南端の町、湯河原は新崎川と千歳川に挟まれた平地に市街地がありますが、今回はターンパイクの南側の山林を水源として町の北側を流れる新崎川の源流を旅することとします。

ちなみに、南側の千歳川は県境の川で、対岸は静岡県熱海市ですが、消防や走っているパトカーは神奈川県のもので、非常事態宣言下でも町の中では「県をまたぐ移動」が日常おこなわれていました。

先ずは駅前広場から「鍛冶屋」行きのバスに乗ります。


終点の鍛冶屋バス停は、五郎神社の鳥居前にあり、巨木の周囲をバスの転回場所とした広場となっています。

鳥居の左横の舗装道路を登り、道なりに歩いていくと、いつしか集落を抜けて、右に幕山、左に城山の尾根を眺める農道のような風情となります。

バス停から歩くこと約30分で、幕山公園の駐車場の横を通り過ぎます。
梅の木がたくさん植えてあり、シーズンには賑わうところなのでしょうが、花が咲かない今は幕山のゲレンデへと向かうクライマーばかりが目につきます。
本当はここまでクルマかバスで来たいところですが、帰りは真鶴道路の渋滞があるのと、バスは始発が9:00以降となるため、歩いてやってきました。

公園のすぐ先で車両用ゲートが閉まっているものの舗装道路は続きます。

併流する新崎川を2回ほど渡るといつしか道路は砂利道となり、周囲が平たんになりました。
このあたりが大石ヶ平と呼ばれるところでしょうか。

幕山への登山道を分け、さらに水源施設のゲートの右横から歩道となる径をしばし登ると、別の林道(白銀林道)にでるので左折します。


すぐに右側にロープが張られた古いハイキングコースの入口があります。
新崎川の沢登りは通常、この先さらに林道を下ったところにある白銀橋から入渓しますが、今日は一旦ここに入ります。

ハイキングコースは左下に林道の橋を見下ろしながら、新崎川左岸の枝沢沿いに右曲していきます。

そして、だんだん沢に近づいていき、渡渉することになりますが、ここが本日の入渓場所となります。
まずはこの「深沢」を遡行していきます。

この深沢という支流は、流れがそこそこありますが、河原がほとんどなく、流木や倒木が多く荒れ気味で、なるべく濡れないように流側の浮石を踏みながら水際を遡行していきます。

遡行すること一時間少々、標高620mほどで正面から涸れた左岸枝沢が入り、流れは左折していきます。(写真奥が涸れた枝沢です)

本流は左岸が植林となっています。
沢の中は相変わらず荒れているので、作業径を期待して植林内を行きたいところですが、もうしばし我慢しましょうか。

さらに数十メートル遡行すると、左岸の植林の間から枝沢が流れ込んできました。
藪と浮石との付き合いに散々飽きてしまっていたため、ちょっとこの枝沢に入ってみることにします。

この枝沢もボサが多くなかなか普通には歩けませんが、すぐに河原がガレとなり奥の方に小滝がありました。

ちょっと近寄ってみましょう。
まあまあの滝なのですが、一時間以上も藪と格闘しながら到着したにしては、勝手ながらちょっと分に合わない?
登ってみたい気もしますが、ここまで来るだけで結構疲れてしまい、意気消沈で引き返すことにします。

帰りはたまらずに、途中で岸から這い上がれるところから左岸の植林の中に切り込みます。
すぐに作業径の跡を見つけて下り、さきほどの涸れ沢の出会いに到着。
径は二俣にある小さな平地に降りてきていました。

涸れ沢の出合から先も、きっと歩道があるに違いないと涸れ沢を見上げると、すぐに左岸にピンクテープを発見。
この径跡をありがたく使用させていただくことにします。

但し、ここも一筋縄ではいきませんでした。
踏み跡はところどころに黒と赤の杭が打ってあり、明瞭なところはわかりやすいのですが、すぐに消失し、気づくと獣道を歩いています。
それでも右手に見える沢からの高さを意識して上り下りすると拾うことができましたが、ハイキングコースが近づいてきて谷が広くなり、左岸から小沢が入るあたりからはほぼなくなりブッシュ漕ぎが主となります。

それでも往路の半分くらいの時間で入渓した場所に戻ってくることができました。

わけもわからず彷徨い、ほとんど収穫もなく疲れて戻ってきたわけですが、実は引き返した場所よりも先(奥)にこの沢の核心部があったことを帰宅後に知ることとなります。
(詳しくは末尾の反省文で記載します)

また、これまでの文字の説明ではわけのわからない部分を図に描くと、このように↓なります。

さて、そんなことは知る由もない今は、本題である新崎川本流(大杉沢)を遡行すべく、林道まで往路を引き返し、林道を白銀橋まで下ります。
白銀橋を渡った(右岸)下流側から簡単に川へ降りることができます。

降り立った河原は先ほどまで遡行していた深沢の出合で、殺風景な荒地の中に割と見栄えのする外観で深沢が落ちてきています。

大きな石が転がる本流を登ると、すぐに両岸が迫ってきました。

距離は短く難度は高くありませんが、このミニゴルジュがあるが故に、他の地域が寒くて使えない期間だけ、わざわざ人がやってきます。

平凡なミニゴルジュは、この5mでおしまいとなります。
左側の階段状から簡単に通過できます。

その先は一旦、大きな石が転がる単なるゴーロの沢となります。
ただ、先ほどの深沢とは異なり、倒木に邪魔されることはなく、人がそこそこ入っているためか岩も安定しており、単調ではありますがストレスはとても少ないです。

突如3mの幅広滝が登場しますが、左岸の岩に下がっているロープで巻くことができます。
(ロープは太くて立派ですが、短めなのと岩の色と同化していて目立たないため、よく見ましょう。)

巻き終えた(巻くというほどではありませんが...)様子はこんな感じで、ここからは沢床に岩盤が目立ってきます。

早速ナメが始まります。
期待が小さい分、想像以上に立派に感じますが、すぐに元に戻ります。

途中で左岸から中尾沢(六方ノ滝がある沢)が地味に流入してきますが、こちらは一旦後回しにして直進していきます。

そして、意外と?立派なナメが登場してきました。

まさに(期待が小さい前提で)「予想以上」に長く続きます

まさにのんびりした冬の沢ハイクです。

ハイキングたる所以は、脱渓と帰りやすさでも発揮されます。
沢がちょっと倒木で荒れてきたな と思い振り返ると、

大きな岩の脇に左岸の植林から出てくる小さな涸れ沢があったので、そこから植林内へと登ることにします。

登るというほどの距離も進まないうちに歩道の石垣がでてきて、遡行終了です。

あとは林の中の径を歩いて帰ることになります。

帰る途中すぐのところで、径は中尾沢を横切るので、最後に六方ノ滝を見物していくことにします。
沢の左岸沿いのピンクテープに導かれて10分ほど登ると、滝がでてきます。

これが六方ノ滝? どっちが?

ではなくて、ここは手前の二俣で、六方ノ滝はこの右側の滝(紫音ノ滝と呼ばれるそうです)の上流にあります。

そこに行くには、左奥のあっちの滝目指して進み、

ここまで近寄ったら、右手の岩壁を見ると...

小さなルンゼ状のところにロープがついているのでこれを登ります。

高度差10mほどを登ってから右手のブッシュの中をロープに導かれていくと....

すぐに到着します。

ザ・柱状節理。

ここまでだったら、歩きやすい靴さえあれば、特段の装備や技術は不要です。

さて、それでは引き返しましょう。

新崎川左岸のハイキングコース跡?は、整備された状態で時折沢を見下ろしながら下っていきます。

深沢を渡ると白銀林道はもうすぐです。
(ここは本日3回目となりました....)

帰りは、幕山公園のバス時刻が限られているため、往路の登山道を下らずに、そのまま白銀林道を湯河原方面へと向かいます。

お、幕山まで700mしかないじゃん。

植林内の整備されたハイキングコースを登ると、10分少々であっという間に幕山山頂です。

山頂は展望が売りだったかと思ったのですが、勘違いしていたのでしょうか。
下が見えるのはこの狭い範囲のみでした。

ならば隣の南郷山はどうだということで、林道の反対側へと向かいます。

途中に「自鑑水」があります。

う~む。  ここは名所?旧跡?

自鑑水から南郷山までの区間は、作業径が入り組んでいて道標も曖昧であるため、自鑑水を経由せずに林道を通って行く人が多いらしいですが、時間も押し迫ってきたため、そのまま南郷山に向かいます。
自鑑水から迷わずにたどり着くポイントは「テキトー」です。
南郷山の稜線へと続く尾根にある2本の登山道のどちらかを見つけることができれば、途中どこを通ってもOK。
本当にそうなのか? 道迷い実績豊富な本サイトの記載はあまり参考にしないでくださいね。

植林の登山道を登っていくと、この地域独特の笹のトンネルに入ります。
ここまで来たら安心。

笹の径にはしっかりした道標が整備されています。

尾根に続く笹の中を歩いて南郷山に到着です。
ここも展望はありませんでした。

仕方なく、休憩もそこそこに、到着したのとは反対側の東側の登山道を下りはじめると、すぐに視界が開けて眼下に真鶴半島と相模湾が見下ろせました。

その後も登山道が切り返すコーナーのところどころで展望が開けます。

夕日に照らされる湯河原の町の奥には(左から)大島、初島、利島・新島、大室山や天城連山を見渡すことができ、湯河原の裏山のここからの風景が本日随一の展望となりました。

展望の登山道はすぐに舗装された林道(先ほどまで歩いてきた白銀林道の延長)に階段で降り立つので、湯河原へは舗装路を右へ一旦登ります。

すぐに五郎神社バス停(往路で降りた鍛冶屋バス停のことです)への標識がでてくるので、ここを下っていきます。

よく手入れされた登山道は、ゴルフ場との境界に沿って下り、農道を経由してバス停のすぐ上で往路の道と合流します。

7時間以上かけて帰ってきました。


●2020年12月19日(日)

湯河原→(バス)→鍛冶屋バス停(8:10)→幕山公園(8:50)

→白銀林道→白銀ハイキングコース(9:45)

→深沢横断点(9:50)→深沢遡行→

清水沢の滝付近(11:00)→深沢左岸歩道(下降)

→ハイキングコース(11:35)→白銀橋(11:45)

→新崎川遡行→標高650m付近で脱渓(12:55)

→左岸ハイキングコース→中尾沢横断点(13:00-13:45)

⇔六方ノ滝(13:20)(往復)→ハイキングコース→

白銀林道⇔幕山(14:50)(往復)→自鑑水(15:05)

→南郷山(15:25)→五郎神社への下山口(15:50)

→鍛冶屋バス停(16:35)


●本日の反省(下調べはちゃんとしよう)

 きっかけは、参考としたガイドブック(「新版東京起点沢登ルート100」山と渓谷社)の当該ページに「中尾沢を遡行し、途中から尾根を越えて隣の深沢清水沢を下降(中略)ルートもおもしろい」と記載されていたことだった。

 興味が湧く一方で、この山は植林を一歩外れるとトゲ植物だらけでとても厄介そうなので、ならば万一の撤退も考えて反対側の深沢から登ってみるのはどうだろうと思い深沢を遡行したのだが、本文記載の通り”おもしろいこと”はあまりなく、徒労に近い往復となったが、帰ってきてからヤマレコにアップした山行記録へのコメントを読んでびっくり。

 コメントをいただいた方(old-diverさん)は、神奈川県内のバリエーションルートのエキスパートだが、今回途中で引き返した深沢を数年前に遡行されており、紹介いただいたそのときの記録を見てみると、自分が引き返した先にワサビ田があり、その横に落差45mで豊富な水量を落とす柱状節理の滝があるではないか。

 なんと、今回行った本流や中尾沢を超える核心部がすぐ近くにあることすら知らずに、(たぶん200mほど)手前で引き返したことになる。

 この記録。ヤマレコで検索していれば簡単に見つかったはずなのに、下調べする発想も、それ以前の気力すらなく、無知起因のカラ戻りに近いことをやってしまった。

 ただ、帰ってきてしまった今、悔いは残るものの、再度挑戦したいかと問われると、その気力がすぐに湧いてこないのも正直なところだ。 というよりも、45mの滝があると予め知っていたとしても、あのときの自分にその先に進む気力があったのかもなんだか怪しく思えてくる。

 そのくらい往復のルートがストレスフルだった/本人の気力と体力が低かったのだが、一方でその後も同じくらいの時間を歩き回っていることを考えると、この地が(深沢入渓までは)交通の便もよく、家からも割と近く、旅行気分の延長で簡単に行けてしまう便利な立地である …時間と準備の労力を投資して遠くに行くので、準備は入念に・現地では多少の障害も乗り越えて行く という気にならない… ことも多少影響していると思われる。

 面倒な道のりを越えて行く価値があるのかないのかは、核心部の滝と直接相対したときにのみ結論付けられるものなのだが、はたして。。。




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