2018年7月23日月曜日

和名倉沢 (沢登り)

奥秩父の茗渓、和名倉沢へのんびり一泊の沢旅へ。
のはずが、、、


ここは秩父市の二瀬ダムの奥。
雲取林道の起点から、三峰観光道路のヘアピンカーブを見たところです。
ここにクルマを停めて、幕営用具と釣道具を背負ってスタート。


稜線にはガスがかかっていますが、今日も暑くなりそうです。


三峰観光道路を二瀬ダム方向に100mくらい進んだところにあるガードレールの隙間(二瀬ダムから2.8kmの表示あり)から明瞭な作業径を下ります。


作業径を進むと自然に吊橋に導かれます。


吊橋の上から見る大洞川の上流方向。
ダムは渇水気味で河原が完全に出ています。


径はすぐに二手に分かれるので、右へ進みます。
分岐から振り返った写真。


径は大洞川の左岸をトラバースし、やがて左岸に流れ込む和名倉沢に下りて行きます。
工事用の足場が和名倉沢を渡るところから入渓。


ここの右岸には炭焼き窯の跡が残っていました。


時間と労力節約のため、しばらくは左岸の踏み跡を歩いていきます。


踏跡は一旦南向きとなった沢が再度西に曲がるあたりまで続きます。


ここにも炭焼き釜の跡がありました。
ここで踏跡もなくなるので、沢に下ります。


釜を持った滑滝が続きます。







入渓から1時間ほどで石津窪が左岸から入ります。


石津窪出合の少し先には弁天滝。
左岸から巻きます。


立派な巻き道で弁天滝の上にある滝も一緒に巻いていきます。


小滝を越えると、


一旦川原となります。


川原の先は小さいゴルジュ状の入口に8mの滝。


一人ではとても登れないので、ここから左岸を巻きます。
巻道は造林作業用のものと思われる立派なものでした。


そのまま歩いて沢に戻れます。


4mの石滝。何故か流れの脇しか登れませんでした。


氷谷が二段の滝で右岸から落ちてきます。


氷谷出合の先は、美しい滑滝が続きます。






どれも簡単に通過することができます。


左岸からワサビ沢ともう一本の小沢が合わさるすぐ先は、


通ラズの入口です。


右岸の明瞭な踏跡を行きます。


巻道から見下ろす通ラズ。


ところどころにテープのマーキングもあり、足元が不安定な1か所にはロープも完備していました。


木立の向こう側に大きな滝の様なものが見えてきます。


巻道から望む二段40m大滝。
巻道はそのまま大滝の下へと続きます。


説明不要の素晴らしい滝です。
本物の実感を写真で伝えられないのが残念。



左岸のルンゼから巻きます。
ルンゼを抜けてから左へ斜上するところが少し足元が不安定ですが、僅かなマーキングと踏跡の濃い所を辿れば、歩いて沢に戻ることができます。


巻道が沢に戻るところは、船小屋窪出合の少し上で、右岸に整地された立派なテン場があります。
これは少し下ったところにある船小屋窪の滝。


和名倉沢はその先で左に曲がると15m滝となります。



右岸をひたすら高い所へと登るとだんだん踏跡が明瞭となり、そのまま歩いて沢に戻れます。


その上にある二つ続く小滝は右岸から見下ろしながら通過。



すぐ先には


6mのヒョングリっぽい滝があります。


右岸を小さく巻き気味に落口付近まで登り、落口に立ちます。


苔むした森の中に小滝が次々と登場します。
どれも問題なく越えて行けます。
規模や難度はそれほどでもないですが、この茗溪を演出する大切な要素となっています。









ここは釜が深いので巻こうかな と思いましたが、踏み跡らしきものが見当たらなかったので、右の流木に乗ってみたところ、そのまま進めたので中に入ってみます。


直上にある釜と滝は簡単にパスできます。


そのすぐ上のここは釜が深そうですが、思い切って飛び込んでみたら、何と手前の右岸側が胸くらいの深さで足がついたので、そのまま突っ張りで取り付きます。


釜付近の急なところ以外はガバで登れました。


その上は谷が開けて、奥に最後の登れない滝が見えます。


やや簾状の二段8mは右岸を巻きます。
そういえば、トポ(「東京起点沢登りルート120」山と渓谷社)に書いてあった右岸を巻く3段の滝ってどれだったんだろう。


これで巻かなければいけない滝は最後。


標高1320mから先の沢が蛇行するあたりからは、やや源頭の雰囲気がでてきますが、ところどころで小滝がでてきます。






水量もだいぶ少なくなってきました。
今夜の宿となる標高1470m枝沢のテント場はもうすぐです。


🐻
さて、無事宿泊目的地となる1470mに到着しました。
ここは左岸からほとんど涸れた枝沢が入り、その枝沢の上流側の本流左岸に整地された良い幕営適地があります。
その昔林業従事者が宿泊していたところなのでしょうか、瓶や陶器をはじめとする生活用品が散乱していますが、完全に平坦に整地されており、薪も豊富な絶好地です。

焚火も順調に着火し、テントの設営を開始しますが、後ろで燃える焚火の音に何か違和感が。。。。
バキバキ。ボッキンといった感じで、木が燃えるときに爆ぜるパチっ・プチッという音とは少し趣が異なります。
そういえば、さっき周囲の様子をみて戻ってきたときに、予め点けてあった蚊取り線香が、2mくらい離れたところに移動して消えていたけど。。。
と思って振り返ると、焚火の向こうの10メートルくらいのところに、小さいクマが一頭。

「ギョ・ギョエ~~ッ。なんだおまえ~」
やばいなと思ったのは彼(彼女?)もなのでしょうか。
もそもそと慌てて前の斜面を駆け上って行きました。

体重100㎏はないでしょうか。毛並みの良い真っ黒な姿はカモシカやイノシシとは明らかに異なり、写真で見るクマそのもので、斜面の上へと消えていくのを呆然と見送りました。

それから一分少々でしょうか。いろいろ考えました。
なぜ自分がいると分かっていたのに(実はわかっていなかった?)ここに来たのか、それとも最初からここに居たのに自分が気付かなかったのか。
親離れしてるのかしてないのか(普通春にはしていると思うのだが。。。)、親が近くに居たらこれからどうなるのか。
明日の朝までにまたここに来るのか来ないのか。。。
焚火にセットしてあった塩焼きと関係あるのかないのか(気付いているよな、たぶん)
時刻は午後5時少し前。

確率としては場所を移動しておいた方が多少リスクは低いかな。
というわけで、焚火を火力全開にして食料の臭いのするものを全て放り込み、パッキングを開始します。
5分くらいでパッキング完了。完全燃焼を確認して焚火を消火して脱出です。

枝沢を挟んでクマが登って行ったのと反対(枝沢の左岸)の斜面を登り、先ずは二瀬尾根登山道の1684mを目指します。

斜面はところどころ木が生えているものの、ブッシュはまばらで足跡が縦横に交錯しており、(何の足跡かを考えさえしなければ)スムーズに登って行けます。


午後5時を回ったころに登山道にでたので、とりあえず二瀬方面へと急ぎます。


クマ除け鈴とホイッスルを鳴らしながら、登山道を足早に下ります。

しかし、具体的にどこまで移動すればよいのでしょうか。
彼らの活動時間となる日没までには何とか2kmくらいは離れてビバーク地を決めたいものだと思う一方で、このまま夜の動物が動めく山中に泊まれば、クマが寄って来ようが来まいが、恐怖の一夜。気にしまいとすればするほど気になって。。。

ここは思い切って下山してしまいたいのはやまやまですが、日没までの下山は微妙で、焦れば焦るほど/騒げば騒ぐほど良からぬことになるとも思い、、、

揺れる気持ちで造林小屋跡を過ぎて少し行ったあたり、徐々に山の傾斜が緩くなっきて、ビバーク地を物色しはじめたとき。…

🐻🐻
ちょうどトラバースする登山道がワサビ沢の源頭を右に緩くカーブするあたりで、何と木の上からクマが落ちてきました。

この二頭目は体調1.5メートルくらいあるでしょうか。一頭目よりもかなり大きく、自分が近付く気配に驚いて木の上から落ちたものと思われます。
最初は20~30メートルくらい先の頭上20メートルくらいで、バキバキッという音がしたかと思うと、樹上から落下。
途中必至で幹にしがみつくも、落下の勢いを止めきれずに5~10メートルほどズリ落ちながら、最後は振り落とされて5メートルくらいの高さから地面に直撃し、戸惑いつつも慌てながら和名倉沢方向へと下って行きました。

凄まじいスピードと衝撃音を、呆然と立ち尽くしたまま見送ります。
しかし、それにも増して衝撃なのは、こんな登山道の脇でも生活しているのだという事実を突きつけられたことです。

あらためて、ここは彼らの生活場所であり、自分は一時だけ通してもらっているだけのよそ者。彼らにしてみれば邪魔者?に過ぎないことを実感します。
そんな彼らを不用意に驚かせて、日常をかき乱してしまったのですから、やはり速やかに退場するのが基本でしょう。

ここは覚悟を決めて今日中に帰ることにします。


反射板跡もそのまま通過して、長い下り坂を転がるように下山。


秩父湖が近付く植林の中で日没を迎えますが、


薄暮れの中を何とか吊橋に到着。


二瀬ダムの照明を横に見ながら、人間の世界へ続く橋を渡ります。


埼大山稜に到着して、残りの水を飲み干したら、周囲は月明かりだけの闇夜でした。


●本日の反省
相次ぐクマとの遭遇に、びっくり。
帰ってきてしばらく経つと、二頭も見たのだから写真の一枚でも撮っておけば良かったと思うのですが、その場のことを思い返すと、彼らがどう出てくるのか固唾を飲んで見つめるのが精いっぱいで、とても余裕はありませんでした。
二頭目が逃げ去って行く段になって辛うじて手が動いたのですが、持ったのはホイッスルとクマ除けスプレーで、カメラではありませんでした。

というわけで、クマはおろか、会った場所周辺の画像すら残していないことに後で気付いた次第です。

でも、熟視した彼らの印象は、コワいこともさることながら、どこか愛着が感じられました。
丸いぬいぐるみのような体形はもちろん、「いつもと違うけど、何だろ」とか「あれ、見つかっちゃった。どうしよう」とか、「わー、やべー逃げなきゃ」といった気持ちが、しぐさや表情の端々に感じられたのは気のせいでしょうか。

日常身の回りに居る動物たちよりも、感情や行動がずっと人間に近い?のではと思いました。
そんな彼らの生活の場を尊重して、謙虚に行動しなくては。

というわけで、インパクトに押されて沢登りの記憶もほぼ消滅です。
こちらは写真が残っているので、画像で思い出そうっと。。。

和名倉はルートを誤らない限りは足回り以外の特別な装備は不要でした。(1470mまではですが。。。)
あと、和名倉山頂に行ったり、源頭まで完全遡行しなければ、十分に日帰りが可能なことが結果的にわかりました。


2018年7月22日(土)
三峰観光道路の雲取林道分岐:7:40)
→大洞川を吊橋で渡り、和名倉沢入渓(8:10)
→(和名倉沢遡行)→石津窪出合(9:10)→
氷谷出合(10:15)→通ラズ入口(11:20)→40m大滝(11:40)
→船小屋窪出合(12:10)→二段8m滝(14:30)
→1470m枝沢(14:45~16:45)→1470m枝沢左岸尾根
→二瀬尾根1684m地点(17:10)→(登山道)
→造林小屋跡(17:30)→反射板跡(18:10)→埼大山寮(下山;19:20)

New

三岩岳(BCスキー)

 国道352号線を檜枝岐村へと向かうと、高畑スキー場の先で小豆温泉スノーシェッドの手前にふくしま国体の表示が立つ登山口があります。 三岩岳と窓明山を周回して巽沢山からここに戻ってくる登山道は、橋の手前の広くなった路肩か、2つ先のスノーシェッドの中にある分岐にある空地にクルマを停め...

Tips