2021年5月26日水曜日

スッカン沢・桜沢 (沢登り) 後半:桜沢遡行

 栃木県を流れる箒川の支流、鹿股川源流部にある桜沢を遡行したときの記録です。

前半戦で、お隣にあるスッカン沢を下降した後で、続けて遡行します。


ここは八方ヶ原にある「山の駅たかはら」から下ってくる遊歩道の終点、咆哮霹靂の滝です。

15分ほど前までは、この50メートルほど下流で合流するスッカン沢にいました。

奥に見える滝の下まで遊歩道を行ってみます。


遊歩道はこの「霹靂の滝」の下で終わります。
滝とは言え、水は流れていません。(正確には左端のクラックをちょろちょろと流れています。)
ぱっと見た目、ツルツルでとても登れる気がしませんが、実はこちらを登ります。

霹靂の滝の左側には、「咆哮の滝」があります。
お隣とは違って水量豊富です。

WEBで検索すると、この右側の部分を登った記録がいくつか出てきますが、外傾するホールドが多く、触ってみると結構脆く、かつヌメっていて危なそうです。

というわけで、もう一度右の霹靂の滝に戻ってきました。
ガイドブックに書かれている通り、左端にあるこの溝を登ることにします。

水が少ししか流れていないこの狭い溝は、ヌメっているものの足場は比較的豊富で、数メートル登るとぐっと傾斜が緩くなり、足だけで登っていけるくらいになります。

登っている途中で振り返って見下ろすとこんな感じです。
下から眺めるよりも傾斜が少ないことがわかりますね。

実はこの霹靂の滝は、途中に奥行き10mほどのテラスがあり、奥に一段目よりも低くて傾斜の少ない二段目があります。

二段目を登って振り返ると、トレンチのような溝が二段になっているのが見下ろせます。

そして、滝の上には広くて平らな空間が広がっていました。
咆哮霹靂の滝の上から、上流で遊歩道が沢を渡る橋までの、距離にして300m足らずの区間は、派手な滝や困難な箇所はありませんが、桜沢の白眉と感じられる景観が続きます。

先ずは、登らなかった左側の咆哮の滝の落ち口です。

広い沢の中で、水流は集中的にここに流れてきていることがわかります。

それでは、2つの滝を分ける舳のような岩を背に、広いナメをゆっくりと上っていきます。

先ずは、すぐ上に見える堰堤のようなところまで行ってみます。

堀の様に横たわる釜を備えた、高さ4mほどの滑滝が川幅一杯に広がっています。

全体を写すとこんな感じです。
3枚の写真を結合した関係で中央部が凸出っ張っているように歪んでいますが、実際はほぼ一直線です。

どこからでも登れそうですが、取り付くまでに深い堀を泳がなくてはいけないので、右端の方のこのあたりから越えます。
岩盤の微妙な凹凸の傾斜が緩いところに足を置き、フリクションで登ります。

登って来たナメを見下ろします。
奥に立っている岩のところが咆哮霹靂の滝の落口です。

堰堤状の滝の上は、ツツジの花の向こうに段差状の流れが広がります。

釜の淵にある岩の上に立って全体を見るとこんな感じで、ナメが奥に続いています。

振り返ると、谷一杯に広がるナメと釜の段差が見下ろせます。

先へと進みましょう。
上のプールは深いところがあるので、左岸から巻いていきます。

二段の釜の上にあるナメを行きます。
奥の方に右岸から滝で流れ込む枝沢が見えます。

枝沢が落ちてくるすぐ上でナメは終わり、奥に見えるナメ滝まで行くと、遊歩道の橋が見えるようになります。

橋のたもとのどちら側からでも遊歩道に登ることができます。

すぐ上流にある雷霆の滝までは遊歩道を歩くことにします。

雷霆の滝のすぐ下のナメ様の流れから沢に戻ると、すぐに滝が見えてきました。

10mほどの高さの雷霆の滝です。

これは雷霆の滝を遊歩道の脇から見たところです。
左側の大きな水流付近は難しそうなので、二条の流れの中間にある乾いたところを登ることにします。

ここから中央部を直登していきます。

一段登った上段から傾斜が強くなります。

そして、この最後の急傾斜の部分では、ホールドはしっかりしているものの、ヌメりが強くなってくるので、持参したタワシでスタンスを磨きながらの登攀となります。
不肖私、実は実戦でタワシを使用するのが初めての経験となります。
横に流れる滝の水をタワシに含ませて、次のスタンスとなる場所をゴシゴシ磨くと、たちどころにヌメりがとれて、いとも簡単なルートに変わっていくのは良かったのですが、磨いている間に岩を見ずに動くタワシの方を見続けていたため、だんだんと目が回ってきます。
途中でめまいの自覚症状に気づき、何とか修正(タワシは見ないように)して、ギリギリセーフとなりました。

滝の上は、ナメの向こうに黒いクラゲのような岩が見えます。

この黒クラゲ岩?、のっぺりして登れなそうですが、

そばまで近寄ると、登ってくださいという場所にスタンスがあります。
核心部のしっかりしたホールドが1か所だけ(しかもヌメってます)ですが、マントルの必要はありません。

普通は左側の滝の右手フェイスを登るみたいです。
流れの左側は登る必要もありません。

よいしょ。クラゲの頭上に登りました。

すぐ先で坊主のようなナメが出てくると、その先で沢はゴーロに変わります。

この上流には、最近観光名所となった「おしらじの滝」があり、このまま沢を登って行くことができますが、今日はここで遡行を終了し、すぐ右岸を並走する遊歩道で帰ることにします。

ちなみにこの先、おしらじの滝までの桜沢は、わずかに滝のような景観もありますが、すぐに水は涸れ、大きめの岩が点在するゴーロとなります。
下の2枚は帰路の遊歩道から見下ろしたものですが、少し欲張って沢の中を行くと、すぐに遊歩道が高くなり、尾根で隔てられてしまうので、おしらじの滝までゴーロを歩くこととなります。

遊歩道を「山の駅たかはら」へと向かう途中で雨が降ってきました。
この遊歩道は単に沢より歩きやすいとの理由で選択しましたが、程よい傾斜のよく整備された径で、両側に続く雨に濡れた瑞々しい森がとても気持ち良いハイキングコースでした。

遊歩道が平坦となると、間もなく山の駅に隣接した園地に到着します。
八方ヶ原はツツジの開花期の終盤で、賑わっていました。


出発地の駐車場へと戻るため、県道56号線を自転車で下ります。
途中にある駐車場から「おしらじの滝」への遊歩道が整備されていました。
過去にも雨の季節にこの滝を見に来たことがあるのですが、その時も滝の水は流れていませんでした。
矢板市や栃木県のパンフレットには水が流れている写真が載っているのですが、いつ撮影したのだろう。 もしかして、枯滝の画像に水を流す加工ができるアプリがあるのか?

クルマを回収して帰路に着きます。


前半のスッカン沢下降はこちら


●2021年5月23日(日)

雄飛橋駐車場(9:00)→入渓(9:10)→スッカン沢下降

→820m右岸枝沢(9:55~10:05)→仁三郎の滝(10:25)

→遊歩道経由雄飛ノ滝(10:45)→(スッカン沢下降・遊歩道経由)

→咆哮霹靂ノ滝(11:15)→桜沢遡行

→雷霆ノ滝上部枝沢より遊歩道へ(12:30)→山の駅たかはら(13:35)

→(以降自転車)県道56号線→おしらじの滝駐車場(13:50)

→おしらじの滝(14:00)→雄飛橋駐車場(14:25)






実は、今回行ったスッカン沢と桜沢は過去に一度訪れたことがある。
たしか2015年の梅雨明けだったので、今から六年も前のことだが、そのときは山の駅から出発して、遊歩道を使って往復するような形で両方の沢を遡行し、最後は「おしらじの滝」で遡行を終えて県道を歩いて帰った。
県道沿いの駐車場や、そこからの遊歩道が着工されていない当時、この滝の知名度はまだ高くなく、山の駅の売店のおしらじソフトや矢板市内の飲食店でのおしらじセットも販売されていなかった。

スッカン沢出合から桜沢を遡行し雷霆の滝を過ぎると、すぐに水が枯れ、梅雨明けの暑い日差しの中を巨岩が点々と転がる殺風景な川原を歩いておしらじの滝に到着したときは、ずいぶん疲れており、見える光景も平坦な水面に反射して映る枯れた滝、すなわち単なる岩壁で、ここが目的地なのかもわからず、きょとんとした気分だったことを覚えている。

それでも、思い思いの場所で青い淵を見物している物好きな人が数名おり、お互いに声をかけて話しているうちに、ここがおしらじの滝であることや、県道へと続く踏み跡がある場所を教えていただいた。

コンパクトな区間に美景が配された沢を遡行した直後だった為か、苦労してやってきた割にたいしたことはなかったと思いながら、帰るために今は遊歩道があるあたりの斜面を登ると、ご夫婦で訪れていた地元の中年女性に声を掛けられた。
その女性が座っているところは、釜をほぼ真上から見下ろす左岸の岩の上で、そこから見る釜の色と透明感が一番好きで、ついつい長い時間見入ってしまうとのことだったので、一緒に並んで見下ろしてみると、水の色や透明感は確かに下で見たものとは違っていて、その時は気付かなかったが、六年の時を隔てるうちにこの地を再訪したいと思う理由の一つとなっていった。

というわけで、今回は沢からではなく、県道の駐車場から再訪してみたが、遊歩道を下って到着した場所にはロープが張ってあり、あの女性がずっと釜を見下ろしていた岩の上や自分が遡行してきてたどり着いた釜の脇は、ロープの向こう側となっていた。

半ば観光地と化した滝は、なかなか人並みが途切れなかったが、ある拍子に偶然人が引け、代わりに六年前の彼らとは別の(恐らく)夫婦が下りてきた。
三人のみが残った遊歩道の終点で、何故かその遊歩道ができる前のこの地の思い出話となり、偶然揃った昔の姿を知る者同士で、誰もいない遊歩道のロープを越えて、かつて立ったであろう場所から滝を眺めたが、特に岩の上から見下ろす淵は、以前見た時に感じた複雑な青色とは異なる印象を受けた。
というよりは、以前見た時の色が思い出せなかったというのが正しい。

すぐに次の見物客がやって来たので元の位置に戻り、少しの間、離れた場所から水面に映る枯れた滝を眺めていた。
訪れる人々は誰もが短い歓声を上げたのちに、数枚の画像を手際よく撮ってすぐに引き上げていく。
入れ替わっていく人々の流れを見ながら、六年前の自分が、せっかく声を掛けてくれた人が居たにもかかわらず、何故もっと長い時間あの不思議な水の色を見て、目に焼き付けておかなかったのかと後悔した。

水の色は遥か昔に記憶から消えてしまったが、長い年月を隔てた後にもう一度この場所へと引き戻す力が、当時のここには確かにあった。

※おしらじの滝では死亡水難事故が発生しています。周辺での遊泳や不用意な接近は大変危険ですのでやめましょう。
本サイトは登山の記録であり、行楽客の危険行為を推奨するものではありません。訪問するときは地元自治体の指導に基づいて適切な行動をお願いします。

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