2020年10月19日月曜日

赤川本谷 (沢登り)

 塩原温泉を流れて那珂川町馬頭で那珂川に合流する箒川。その支流赤川は、途中で流入する冷泉の青色とその泉質が赤く染める岩肌が有名ですが、WEBで検索してもあまり遡行記録が出てこないのと、たまにある記録も結構な強者によるものばかりだったので、興味はあれども長らく敬遠していましたが、思い切って行ってみることにしました。

なんでわざわざこんな寒い時期に、、という懸念はありましたが、とにかくということで....


塩原温泉郷にある元湯温泉で、谷沿いに3軒ある宿のうち、一番高いところに位置する「大出館」のすぐ上にある駐車スペース脇の林道入り口が入山場所となります。

元湯へ行くには西那須野塩原I.C.から国道400号線を走り、塩原温泉の奥にある「上塩原」交差点の少し先に左折する看板がありますが、今回は脱渓するのが日塩もみじライン(日塩有料道路)路上の橋なので、そこに折り畳み式自転車をデポしてから、もみじラインを下り、新湯のすぐ下にあるT字路から元湯にやって来ました。
通行止の看板と三角コーンが置いてあるすぐ横にクルマを停めてスタートです。

通行止めの非舗装の林道は、すぐ先で更に頑丈なゲートが閉まっていましたが、路面そのものは大変よく整備されており、ゲートが閉まってさえいなければ普通の乗用車でも走れそうです。
数分歩くと「遊歩道」の標識があり、左手を流れる赤川に架かる立派な橋から整備された遊歩道が登って来ています。

更に直進すると、車道は歩道に変わり、この看板が通せんぼする形で遊歩道の終点となりますが、構わず看板の裏の方へと直進していきます。

その昔は林道か森林軌道が通っていたであろう左岸の遊歩道の延長をそのまま歩いて行くと、所々が崩れはじめます。
斜面が急なところには立派な石積みが残っていますが、そうでない場所の路面が流れてしまっており、一旦石積みを降りて登り返すといったことをしながら踏み跡を辿っていきます。

そして、徐々に踏み跡も薄くなり、スリップして川まで落ちると危なそうだなと感じ始めて、川原に下りられるところを下ったら、そこは鎌研沢の出合でした。
鎌研沢は岩だらけの対岸からほとんど流れずに出合っています。

苔むした炭焼釜跡と思われる石積の傍らで沢支度をして入渓します。

鎌研沢出合のすぐ上流には橋脚の跡が残っていました。

恐らく、かつての林道か軌道はこの場所で左岸から右岸へと渡ったと思われ、その後少しの間は右岸に法面と思われる石垣が残っています。

ただ、路面の跡はあくまで所々に形跡が残るのみで、継続して歩き続けられるものではありませんでしたので、その下に続く川沿いの平地を、もっぱら進んで行きます。

時折渡渉しながら、平凡な川原を進んで行きます。
これは905mの右岸枝沢。

その少し先で左岸から2本連続して枝沢が落ちると、あと200mほどで最初の難所となります。

水の青色と岩の茶色を感じるようになってくると、、

コンクリート堰堤の登場です。
写真では左側に暗く写っていてよくわかりませんが、右岸の泥ルンゼを登って巻きます。

浮き石と倒木と泥で構成されたこの泥ルンゼは、2本くらいの木の根以外は、途中に確固たる手掛かりがなく、概ね泥と足底のフリクションで登っていきます。
チェーンスパイクが大活躍。

このルンゼは、堰堤の上で左にヘアピンカーブする川に突き出している小尾根についており、登り切ると両側に川を見下ろすこととなります。
そして、小尾根の上から堰堤の上の平地に向かって下っていく踏み跡があります。

赤い点線の場所についている踏み跡を下って、堰堤上の平坦な川原に下ってきました。
(写真の左下が堰堤です)

下を見下ろすとこんな感じ。

そして堰堤のすぐ上には940m左岸枝沢が流れ込んでいます。

ヘアピンカーブを回り込んだ右岸斜面です。
先ほどまで、この壁の上に立っていました。

ヘアピンカーブの先は直線の廊下となっています。
水深はそれなりにありますが、左岸を歩いて行くことができます。
地形図では、堰堤上部は左に直角に曲がるように書いてありますが、実際はUターンして下の写真の突き当たりで右折するイメージです。

右折したところから廊下を振り返ると、こんな感じで直角に曲がっています。

その先には、この季節の最大の難所?となる淵がありました。
左右とも岩壁の一部にヘツり切れない個所があり、胸よりも深い水深の中に一か所だけ、右側の岩壁へと続く浅瀬が延びているので行こうとしますが、足がズブズブと埋まってあっという間に水没しそうになり撃退されます。
寒くない時期ならば何も問題ないところですが、水温は恐らく5℃前後で気温も10℃を割りそうな日の水泳は何としても避けたいところです。
思わぬところで最大のピンチを迎えました。

仕方がないので、左岸を行けるところまでヘツりますが、案の定行き詰ってしまいました。
ただ、行き詰った小さなスタンスから水の中を見ると、ヒザ下くらいの深さのところに大きな石があったので、ここは濡れてもともと、、と観念して全力でジャンプ。
おかげさまで首尾よく着地することができました。
ズブ濡れにならなくて済んだのですが、着地の時にうっかり開けていた口に大量の飛沫が飛び込み、塩辛くて苦く、かつエグいこの川の味を味わうことになりました。

さて、距離的には入渓してからちょうど折り返し地点となるジャンプの淵から、この川の見どころが始まります。
先ずは板状節理の5m滝です。

オレンジ色の岩と、その上を流れる水流が素晴らしいです。

見る方向を変えると、差し込む光の角度によって水の色も微妙に変化していきます。

板状節理の滝は、流れの左端の階段から越えます。

そして、滝の上に上がると、そこには板状節理の赤い板が敷かれたナメがありました。

赤い板のフロアの奥は小さな釜状となっています。

ガイドブックには、この小さな釜は右岸から巻くような記載がありますが、両岸が狭まった右側の水中にスタンスがあるように見えたので、ヒザくらいまでを水につけながらへつって通り抜けます。

通り抜けたところも、赤い岩盤のナメとなっていました。

次は正面が小滝となってきます。

正面に見えていた小滝は、960mの左岸枝沢で、本流はその前で左にカーブします。

そして、カーブの先には、淵とナメと釜を隔てて、次の滝があります。

左側をへつって手前の淵を通り抜けると、短いナメの奥に大きな釜を持った滝が近づいてきました。

深い釜の青色と、水と接する岩盤のオレンジ色の対比にインパクトがあります。

この深くて大きな釜の左側をヘツって滝の下へと向かいます。

最後は流れの左端にあるオレンジ色の急階段を登っていきます。

時折ナメが現れる川原を少々行くと、大きな滝が見えてきます。

この沢最大の滝、20mの大滝です。

すごい迫力。そして鮮やかな色彩で、ゆっくり拝見したいところですが、酸っぱくて苦い滝の水煙が吹き付けるので、長い時間見続けると、目を開けていられなくなります。

左岸斜面の陰に身を隠しながら何度か見た後に、その斜面を登って巻いて行きます。

ところどころにダイモンジソウが咲く斜面を、登れるところまで登って滝の落ち口の上に近づいて行きます。

太い木にトラロープが下がっているところに着いたら、ロープ沿いに少し下り、ロープが切れてなくなるところから上流側の岩壁の間に窪みがあるところを登ると、滝を越えることができました。
下の写真は、越えてすぐに振り返ったところです。

大滝の落ち口との位置関係はこんな感じで、落ち口に近づきすぎないのがコツだと思います。

さて、また遡行に戻ります。

大滝の上、間もなくで、滝で落ちてくる1005m右岸枝沢を見ながら緩やかに右に曲がり、淵やナメを交えながら進んで行きます。

左岸の岩壁から細い簾状の水流が落ちるこの函状は、斜度の緩い左側をへつっていきます。

振り返ってこんな感じのところまで来ると、だんだん急になってへつり難くなりますが、水深はぐっと浅くなるので、水の中をじゃぶじゃぶ歩いて通り抜けていきます。

1055mの左岸枝沢が8m滝で落ちてくるところには、本流に青い釜があります。

左側の端を簡単にへつれます。

そして、1075mくらいで、最後の赤い滝、10mとなります。

この滝は、傾斜も緩く流れの両脇ともホールドが豊富そうですが、それは帰って来てからゆっくり写真で見たときの話で、実際に間近で目にすると大量の飛沫を発生させており、目に入ることを考えると、全く登る気がせずに巻いてしまいました。


巻きは左岸の斜面からで、薄い踏み跡が付いており、斜面のコンディションも先ほどの大滝と比較するとかなりユルくて良好です。

巻き径は、10m滝の上にある3m滝もまとめて巻いて、上から水が流れているこのホラ穴のところで沢に戻ります。

穴に近寄ってみると、上から流れている水は、明らかに沢とはつながっていないところから流れ出ており、その水が触れるところだけが茶色く変色しています。
どうやらここがこの沢の水を苦くしている源泉みたいです。
源泉のミネラル分が固まって徐々に成長し、庇のように張り出して穴状となったのでしょうか。

温泉が湧き出しているところに登ってみます。
岩の中から冷たい水が流れだしており、触ってみると手の細かい傷の部分に沁みます。
おっと、迂闊に触ってしまって大丈夫かしら.... 帰宅してから一週間たっても異常がないのでたぶん問題ないでしょう。

温泉、じゃなくて冷泉は2カ所から湧出しており、そのまま沢へと流れ込んで行きます。

そして沢の本流は温泉成分がなくなり、水質も岩の色も普通の沢となりました。

スタートしたときはほとんど色づいていなかった木々の葉は、薄っすらと黄色くなってきました。
全体的に急傾斜がないこの川は、出発地の元湯温泉と終了するもみじラインとの6kmほどの間の標高差が400mしかありませんが、その間の気温2℃くらいの差の中に色付きはじめる境界線があったみたいです。

先ほどの10m滝からは、一層傾斜が緩くなり、周囲も徐々に開けてきて、時折もみじラインを通るバイクの音が聞こえてくるようになり、もうそろそろ終盤かなと思っていると、また大きな滝が見えてきました。

1135m左岸枝沢の少し手前にある12m滝は、とても登れませんが左岸から簡単に巻くことができます。

巻き終わった落ち口の上には、橋脚の残骸が残っていました。
ここからもみじラインまでは距離にして5~600m。標高差は50m程で、もう指呼の間です。

時折小滝と釜が現れますが、いずれも簡単に通過できます。

それよりも、右岸すぐそばに先ほどの橋脚跡へと続くと思われる幅広い平地が接近してきて、わざわざ沢中をあるかなくともハイキングの様にのんびり歩いて行けるようになります。

でも、せっかく沢登りに来たのだからと、最後は意地になって平凡な沢を歩きます。
ここは最後の二俣となる1147mの出合です。
どちらに行っても大差ないのでしょうが、自転車置き場に近い左へと行きます。

この川は上流にスキー場や農地があることから、ところどころにフェンスやネットの切れ端が落ちていましたが、傾斜が緩くなってくるこの辺りでは、ごみが目に付くようになってきます。

そして、泳がないと通過できない大釜が登場します。

大釜の向こうはS字状の滝みたいです。
直後に長時間の自転車での下りがあるので、泳ぐ選択肢は全くなく、右岸から巻いて行きます。

人工物が豊富な右岸の林の中を歩いていると、取水堰のようなものが見えてきました。

何も考えずに歩いていると、取水堰に到着。

堰の上下は滝になっているみたいです。
そして、上流側の二俣のすぐ上にはもみじラインの橋が架かっていました。

林の中を歩いているうちにあっけなく終了してしまいました。
なんだか尻切れトンボのような気分だったので、沢装備の汚れ落としを兼ねて、6mの滝となっている堰の下の沢に戻ります。
ここで終了。

堰の周辺は、どこからでも舗装道路にでることができます。
先ほど堰の上流に見えた橋から100mほど新湯方向に行った、市の境界にある路肩の駐車スペースから、デポしていたチャリに乗って、クルマ回収へと向かいます。
元湯への道は下り基調で、もみじラインでペダルをこいだのは30回くらい。
新湯のすぐ下で、もみじラインを降りてからは700mほどの上り坂がありますが、その先は赤川までずっと下り坂でした。(あと赤川を渡ってから大出館までは当然登り坂ですね。)

大出館は高温の源泉かけ流で2種類の泉質が楽しめます。
タオルが黒く染まる「墨の湯」(女性入浴制限時間あり)が売りですが、もう一方の炭酸泉は、首都圏ではあり得ない、溶存イオンが余裕で1000mgを越える強烈な名湯だと思います。
日帰り入浴(¥750/大人)は、16:00までに退出しないといけないので急いで!


●2020年10月19日(日)

元湯温泉奥の林道ゲート(8:20)→鎌研沢出合(9:00)

→本谷遡行→堰堤(10:20)→大滝(11:50~12:20)

→1055m二俣(12:55)

→日塩もみじラインNo.38カーブ(14:30)→(自転車)

→もみじライン→新湯→元湯温泉(15:00)





今回「赤川本谷」へ行くにあたり、事前に情報を集めるため「赤川本谷」と検索すると、目的の情報は見当たらず、北海道函館市の賃貸物件ばかりが引っかかった。

同市市街地の北の外れに赤川という地名があり、そこに本谷さんという姓の地主の方が何名かいらっしゃるのでこのような結果となるようだが、自分は十代後半から社会人となるまでの期間その町に住んでいて、その赤川をたびたび訪れていた。

最初のきっかけは、今は移転してしまったが、当時運転免許試験場が赤川にあり、試験を受けに行ったことであった。

試験が終わった後、合格発表と免許証交付までの間にかなり長い待ち時間があったので、スマホの登場まで30年近く待たなくてはならなかった昭和の終わりの当時は、仕方なく周囲をぶらぶらして時間をつぶすことが恒例で、私は試験場前の道を市街地とは反対方向に歩いてみることにした。

今は新外環のI.C.ができ、すっかり市街地となったそのあたりは、当時舗装されていたものの対向二車線の狭い田舎道で、沿道には茅葺屋根がいくつか残っており、緩い坂を上っていくと場末のラブホの看板と並んで「笹流ダム→」と書いた小さな標識があった。

標識に従い砂利道を少し行くと、公園と呼ぶのはどうかと思うくらいのうらぶれた緑地に着いたので、ふと横を見ると、森の中に当時の地方都市ではあまり見ない、10階建てマンションくらいの古くて大きなコンクリートの壁がそそり立っていた。

当時は自由に中に入ることができた大正時代の構造物を通り抜けて堰堤上に立つと、反対側は満々と水湛えており、バットレスダムという防壁一枚で水の重量を支えている危うい構造がよく実感できて、足下の古いコンクリートが何かの拍子にひび割れて崩れだしたら、さっき試験を受けた場所やここに来るまでの道中はどのようになるのだろうと想像したことを思い出した。

クルマを買ってからは、釣りを始めるようになり、便利な立地のこの池には授業中によく釣りに出かけたが、もしかすると逆で、免許の試験を受けたときにこのダムを見たから釣りを始めたのかもしれない。

貯水池は安全のためか、簡単には釣りができない構造になっており、そこを何とかするために餌釣りはあきらめ、専らルアーをキャスティングしたのだが、途中に障害物が多いのと、調子こいて遠投しすぎると低木が生い茂る対岸に着地してしまうのとで、ずいぶんとたくさんの備品を献上してしまった。

そうこうしているうちに活動する場所は献上品が少ない海岸へ、そこから次第に変化が大きい川へ、そして競合が少ない源流へと移っていき、三十余年を隔てたのちにこんなに遠い赤川になっていた。

※箒川水系には魚種と場所ごとに漁期が設定されています。釣りをされる場合は禁漁期間でないかを事前に塩原漁業協同組合にご確認願います。尚、本記録掲載時は釣道具を携行せず、釣りも実施しませんでしたが、砂防ダムより下流では25㎝超のヤマメとみられる魚が悠然と泳ぐ姿を何度か目撃しました。

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