2016年9月13日火曜日

自家用車で登る百名山  ~その5~巻機山・ヌクビ沢

連続してやってきた台風と秋雨前線の間に、唯一晴れた土曜日。
もう終わってしまった夏を惜しむ趣旨で、久々に上越の山に沢登りにでかけました。


下りてきて気づいたら、危うく(というかほとんど)単なる百名山ハントになっていました。


南魚沼市 清水の奥にある巻機山の登山口。
桜坂駐車場をスタートして徒歩1分のところにあるこの看板を、
左手(駐車場からは直進)のヌクビ沢コースへと進みます。


すぐに別荘地の様な建物が散見されてきますが、右側の山に沿う登山道をひたすら進み、20分ほどであらわれる棒杭状の標識を左に行きます。



道はすぐに下りとなり、沢を渡渉する目印が。
ここで渓流シューズに履き替えて入渓。


すぐに数メートルの滝が連続するゴルジュとなります。
最初の滝は左側の段差の上を進み、、



次の2つは流れの右側からクリア。



これは左側壁の少し高い位置を巻くと、、、



その上では大きな釜を持った滝が豪快に飛沫をまき散らしています。
これが吹上げ滝か?

この滝の岩はつるつるで、上るのに骨が折れそうなので、すぐ左脇を通る登山道を行くことにします。



登山道は(たぶん)その先に続くであろう幾つかの滝を全て巻き、大きな滝が見晴らせる場所に着きます。

白く輝く谷の奥にあるのは、落差が優に10mはある通称ニセアイガメの滝。

登山道は左側を登り続け、今見ている景色を大きく迂回するのですが、ここは踏み跡をたどって沢に下り、滝の横を登ることにします。
踏み跡を下った先にある、水がトレンチ状に谷を横切るところをジャンプして飛び越え、滝に向かいます。


右側の平らな岩盤の上を進みます。



目前に迫るとなかなかの迫力。
右側の段々の岩壁を比較的容易に登って行けます。



落ち口付近で振り返ると眼下には大きく開けた谷の中に、登ってきたルートが見晴せます。



そしてすぐ上流の流れが右に曲るところには、地形図にも滝マークのあるアイガメの滝が。
傾斜が急な部分だけでも優に20m以上の落差があるでしょうか。
先行するパーティーが左側を登っています。


流れを渡って登山道に戻り、後に続きます。
素晴らしいスケール感。



滝の横の登山道を登って行くと、途中に大きな滝壺が見えます。
日差しが強い時はこの滝壺(甕)が藍色になるのでしょうか。



振り返ると歩いてきた登山道が、巨大な岩壁を横切っています。
(草の生えている下端のあたりが登山道です。道といっても岩にペンキで目印をつけてあるのに近いイメージ)


上の写真を写している場所からは、藪の中を明瞭な登山道で滝の最上部まで登り、ここで沢に降ります。
下降する場所は支点が無いと厳しいことろで、「スタッフ」と書いたシャツを着た方と工事業者の様な方が、ドリルで岩にアンカー用の穴を明けていました。(一番左に写っている3名です)
はるばるお疲れ様です。

ここで先行パーティー(2組5名)に追いつきました。
この先は三嵓沢の出会いまで写真の様な大きな岩が転がる川原が続いていきます。



割引沢とヌクビ沢の二股。
正面の大きな岩に赤ペンキで道標が書かれています。
右のヌクビ沢へ。



正面にガレ沢が見えて流れが左折する場所で滝が現れます。
左側の平らなスラブをシューズの摩擦力で登ります。


広い岩盤を登って行くと徐々に傾斜が緩くなります。
この岩の名前は「物干岩」


岩盤が河原に戻る直前で昼食休憩し、汗と滑って転んだときに濡れたシャツを乾かします。


物干岩からすぐで三嵓(みつくら)沢との出会いです。
今日の目的はニセ巻機の下を源流とする三嵓沢で、右股の支流として10mくらいの滝で流入します。

早速この黒い滝の左側を登ります。

が、あれ?
見た目に反して岩はつるつる滑ります。(ちょうど水流が勢いよく宙に浮くあたり)
そうでないところは泥がいやらしく付いており、頼ってつかまるブッシュもすぐに抜けるものばかり。

「簡単に登れる」との前評判とは裏腹に、最後の1段が抜けれないぞぉっ。

状況が変化しているのか、それとも最近の傾向として悪い巻き癖がついてしまったか。
いづれにしても直登する力量が無いみたいです。

こうなったら仕方がない。左側小尾根のブッシュから得意?の高巻きを試みますが、なにせ「簡単に登れる」(はずの)滝なので、巻道などついておらず、猛烈な藪で進むのもままなりません。
(が、一方で間違って落ちるとかなり痛そうです)

疲労困憊の結果敗退。
トホホ


三嵓沢に入れなかったときのエスケープ手段は、本流のヌクビ沢沿いに続く登山道を引き続き進んで、割引岳直下の稜線に出ることです。
こちらのルートも15mの「行者の滝」からはじまります。
下に立っている人と比較すると大きな滝ですが、こちらは少し崩れているものの、登山道を示す赤ペンキマークのところから特に問題なく越えることができます。



不確定要素の少ない登山道ですが、問題は行程の長さです。

三嵓沢を進むことができれば、一時間ほどで尾根の登山道の七~八合目付近に出て、そのまま駐車場まで下ればおしまいだったはずですが、この登山道は巻機山の向こうにある割引岳山頂付近まで登り、そこから引き返して巻機山を越えて帰って来なくてはいけません。

下山道八合目までの登高差は1.5倍以上。距離は2倍をはるかに超え、時間も2時間以上の延長です。

さっそく見た目が厳しいゴルジュが登場しますが、計画未達で落ち込んだのと、暗くなる前に帰りたいのとで、迷わず右岸を高巻く登山道を進みます。



高巻く途中から見える対岸(左岸)には、急な枝沢が水を落としています。



但し、あまり気を取られて見とれてるのはご用心です。

この巻道は、全体的に切り立った崖の途中を通っており、つまずいたりちょっとスリップした場合には、ただではすまないところです。

👆こんな感じのところをよたよたと歩いていく。
(この写真は上流で登山道が対岸に渡った場所から撮影)

登山道はこの滝の下で対岸(左岸)に渡り、再び高巻き始めます。


が、それも束の間。
道は比較的すぐに消滅し、沢の中を歩くようになります。

振り向けば、ずっと進行方向にそびえていた天狗岩が背後になっています。



沢の中にある大きな岩に、登山道を示す赤ペンキマークが続きますが、真剣に探さないためか、登山道の様なものは見当たりません。


大岩の転がる沢を進むと、赤ペンキは標高1,750m付近で、左岸の急な階段状の岩壁を登るように導くので、そこをぐいぐい登ります。

遡行してきた沢がどんどん眼下へ離れていきます。


左側を見ると、先ほどまで歩いていた沢の上流が、崖となって割引(われめき)岳へと続いています。


稜線の登山道に出ると、5分少々で割引岳の頂上です。

誰もいない静かな頂上。
思わずリラックスしておやつにします。

しかし、こんなところでのんびり寄り道している場合ではありません。
隣(右奥)にある丘は日本百名山の巻機山。
帰り道の途中でちょっとはずれると、簡単にゲットできそうです。


登山道は巻機山へと続く尾根の北側をトラバースしていきます。
こちらのだ方だけガスがかかっています。

地形図を見ると、この道はやがて避難小屋方面から登ってくる井戸尾根コースの登山道に合流し、そこから左へ行ったところに山頂があるみたいです。


と思いながら歩いていると、突然巻機山の山頂に出ました。
あまりにあっけなく、なんだか拍子抜け。。

もうちょっと先だと思うんだけどなあ。
でも「山頂」って書いてあるし、この先はもう「牛ヶ岳」みたいだから、まさかもう一個巻機山があるわけではないだろうし。。。

まあ、いいか


てくてく井戸尾根の登山道を下って帰路につきます。
途中に登ってきた沢と、何度も見上げた天狗岩が見渡せる場所がありました。

登路の沢を拡大してみると

ちょうどヌクビ沢のゴルジュを巻いた右岸の小径が、写真中央のブッシュの中に細く見えます。
この径でパスした沢の中には、いくつかの大きな滝がある模様です。
無難に登山道を選択しておいて良かった。。。。



さらにちょっと下った5合目からは尾根の反対側に、日本を代表する名渓の米子沢が見えます。

こちらには登山道がついてませんが、本日遡った割引沢に匹敵する雄大なスラブに加えて、回廊の様な狭いゴルジュや、長大な滑床を持った素晴らしい谷です。
いつかまた遡行できる日が来ると良いです。



2016年9月10日(土)
清水・桜沢駐車場(8:30)-(登山道ヌクビ沢コース)→割引沢
→ヌクビ沢遡行→登山道(割引岳コル)→割引岳(13:00)
→巻機山(御機屋:13:30)→井戸尾根登山道下山
→桜坂駐車場(16:00)


●本日の反省

1.本当に巻機山に登頂したのだろうか?

 家に帰ってガイドブック(「新潟県の山」山と渓谷社)を見ると、「頂標のある御機屋(おはたや)に着く。ここは最高点ではない」「最高点は稜線を牛ヶ岳方面へ10分ほど東進したところにある」とのことであった。
 国土地理院の地形図には最高点付近に「巻機山」と印刷されている。
 「頂上」や「山頂」という単語がどこにも登場しないのがちょっと引っかからないでもないが、まあいいや。
 きっと百名山で人気になって登山客も増えたから、顧客サービスで登りやすい御機屋に山頂って書いたかもしれないし。それはそれでありがたい。何といっても余計に歩かなくて済んだし。


2.計画未達だった

 本来の目的だった三嵓沢は、入ることすら叶わなかった。
 年齢と肥満に起因すると思われる力量不足が深刻だ。
 結果百名山ハントのおまけはついたのだが。。

 とはいえ、このルートは沢沿いを進み始めてから稜線に着くまで一貫して、雄大、爽快でワイルド。そして変化に富んでいて素晴らしかった。
 途中の巨岩帯や源流部は少し冗長で、ヌクビ沢の巻道は怖いと感じる向きもあるかもしれないが。。。。
 
 あと、下山した井戸尾根は少し臭かった。

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