2022年5月4日水曜日

自家用車で登る百名山 ~その34~ 火打山(BCスキー;惣兵ェ落谷)

4月下旬の笹ヶ峰への道路開通を機に、例年になく残雪が多いという2022年、妙高の火打山へスキーに行きました。

豪快なコースとして定番があるものの、途中のスノーブリッジ有無によりリスクが大きく左右される惣兵ェ落谷に、影火打の方向から滑りこむのが目標です。

ここは妙高市笹ヶ峰の火打山登山口です。
道路が通行可能であれば、季節を問わず、ここが火打山への最短ルートの起点となると思います。
駐車場が満車となり路駐が恒例とのことでしたが、駐車場が2割くらい空いていたのは前夜に降った雪がうっすらと積もっている影響でしょうか。
ちなみに、降雪はあったものの到着する午前7時前には全てシャーベット状となっており、夏タイヤでやってくることができました。

登山口の小屋も、周囲に雪が積もっていなかった昨年とは違い、残雪は十分です。

先ずは、最初のマイルストーンである黒沢橋目指して、極めて緩やかな樹林の中を登って行きます。

ほとんど傾斜を感じず、あまり登った実感がないのですが、歩き始めてから1時間半ほどで、標高差250mほどの黒沢橋(黒沢出合)に到着です。

橋の上から上流を見ると、沢はかなり開いていて雪解け水がごうごうと流れています。

そのとき登って来た地元の人たち何人かの意見を聞いて、黒沢沿いには入らずに、夏道沿いに登ることにします。

黒沢からの登山道は十二曲がりという名前がついている通り、このコース一番の急斜面で、昨夜の低温で固くなった残雪の上に数センチの新雪が積もった状態で、非常に表面が軟弱、かつスリッピーとなっており、クトーをつけてスキーで登っている人たちは結構苦闘していました。

登ることに割り切り、ブーツにアイゼンを着けて、シートラして尾根の上に到着です。

ここから先の尾根の上は通常雪で覆われているそうですが、何故か登山道がついている尾根の上部はブッシュが出ており、雪が残る黒沢側の側面を巻いていくことになるため、引き続きシートラにアイゼンのまま続けて登ります。

見下ろす黒沢には誰か入ったのでしょうか?

標高1950mより下くらいで傾斜が緩くなり、ようやくシール登行ができるようになります。
自分はこの先の黒沢岳西側のトラバースを警戒して、引き続きシートラで登りますが、その必要はなかったことが後でわかります。

標高2000mを過ぎると、急に傾斜が緩くなり、周囲が開けてきます。
この辺りを富士見平と呼ぶのでしょうか。
前方にちょこんと頭がでている半分雪面の山が黒沢岳ですね。

右手(東)には、それまで樹間からちらちら見えていた三田原山方面が見渡せるようになりました。

登って来たルート方向を振り返ると、とても雰囲気の良いところです。

左手斜め前方に見える高谷池ヒュッテの大きな屋根に向かって、黒沢岳をトラバースしていく途中からは、山々を覆っていた雲が晴れて、焼山や火打山も見えてきました。

トラバースの最後で登山道はヒュッテに向けて下りとなるので、スキーに履き替えて、想像していたよりもはるかに巨大な高谷池ヒュッテに到着です。
ここまで4時間半。

ヒュッテの前でお昼ご飯を食べながら振り返ってみた黒沢岳の西側トラバースです。

さて、ここからは湿原の先に頭を出した火打山を目指して、平坦なルートを行きます。

天狗の庭を過ぎたあたりから、徐々に稜線の南側に取り付いて、山頂手前の2310m凸に向けて斜登行していきます。

登りついた2310mからは、それまで見えなかった日本海側の景色が目に飛び込んできました。

前方右手(北)の火打山北尾根から後方(南東)の妙高山までの展望。

火打山は威圧的に聳えているようにも見えますが、距離的にはもう指呼の間です。

頂上直下を登るにつれて、北に続く尾根が見下ろせるようになり、背後のこれまで通って来たルートの展望を遮るものがなくなると、山頂に到着です。
スローペースなのか、それとももともとこんなもんなのか、6時間以上を要しての登頂です。

南側を見下ろすと、乙見湖の方にこれから滑走する谷が見えます。
中央に平坦に舌状に伸びていく尾根の右側のU字の谷が惣兵ェ落谷です。

滑走開始場所に向けて、影火打を目指してブッシュの中を下って行きます。

滑り始めるあたりを見ると、ちょうど影火打の北斜面から、アマナ平方面を目指して滑り始める人が見えます。
いつかは滑ってみたい、笹倉温泉まで標高差2000m近くある憧れのルートです。

自分が滑るルートの全貌が見えてきます。
既に2名の先客が滑って行った模様で、最後に遅い時間となった自分は、コル付近からトラバースしているトレースと同じ要領でエントリーすることにしました。

それでは、斜滑降で大斜面の中央に入り、滑走開始です。

傾斜が急な上部は新雪が溶け切っておらず、ちょっともさッとした印象の手ごたえでしたが、惣兵ェ落谷が眼下に現れるくらいからは、重ためではあるものの、違和感のない雪質となり、障害物の無い斜面を自由に滑って行きます。

右岸に続く嘉平治岳の雪庇の尾根を見上げるようになると、谷へと入って行きます。
谷へは、左岸から幅広い林道が埋まっているかと思うような入口が用意されており、中に入ると見下ろしていたときのイメージそのままに、廊下の様に続いています。

影火打を振り返ると、滑って来た大斜面の左(西)にあるこの沢の源頭部は大規模に地面から剥がれているのが見えます。

そして谷を下る途中も、底雪崩で茶色くなった側面の下にはブロックや倒木が転がっています。
のんびり立ち止まらない方が良いかもしれません。スピードに任せて滑り抜けていきます。

標高1550m付近で、垂直に近い側壁が全面的に雪崩れて廊下状となるところからは、先行トレースに従って左岸の斜面を斜滑降していきます。

そしてそのまま左岸から合流してくる鍋倉谷との段丘の上に到着しますが、ここからが最大の不安であった鍋倉谷の渡渉を考えることとなります。

鍋倉谷の上流方向に行けばスノーブリッジは出てきそうですが、対岸に渡った後の斜面はどこも全層雪崩の跡でズタズタです。

仕方なく、下流側へと流れに任せて行ってみると...

なんと惣兵ェ落谷との出合だけが、すっぽり雪で埋まっていました。
但し、広い出合の雪面の上には人の頭くらいの幅のクラックが何本か走っています。
(下の写真で足跡の様に見えるのは全部亀裂です)
この雪が落ちてしまうと、とても厄介なことになりそうなので、上を一気に直滑降。
可能な限り短時間で、極力勢いを失わずに対岸に滑り登る感じで滑り抜けました。

対岸の安全な場所までそそくさと登った後から振り返ります。
このブリッジはいつまで架かっているのでしょうか。先ずは自分の時に残っていて何よりでした。

鍋倉谷の左岸に渡れば、あとは単調な帰路を消化していくこととなります。
傾斜のほとんどない平地を、なるべく弥八山の裾野に沿いながら、雪質がザラメとなりよく滑るのに助けられながら、ゆるゆると下って行きます。

底に雪が残った小沢を下り、少しの平地を横切ると、林道跡に出ました。
ちなみに、台地上から林道へは、下の写真の小沢を降りましたが、正解はもう一本東隣にあるちょっと深い方の沢です。
…林道上の1256m標点の上流側3本目(写真はそのすぐ横の4本目)で、そこより上流側の沢は、中を水が流れていました。

さて、林道に降り立ったところですっかり終わった気分になったところが大間違い。
最後の徒歩が試練の時間となりました。
4km近くある除雪されていない林道は、ほぼ全区間が登りで、所々で雪が途切れているため、スキーを担いで歩くしか方法はありません。
また、雪の下が空洞となっているところを踏み抜くと、一日の疲労が溜まった足ではリカバーできずに消耗していきます。

黒沢を渡る橋のところで、やっと除雪された舗装道路に到着しますが、笹ヶ峰はまだ500mほど先(しかもここも登り)でした。
一時間の林道歩きで、滑った沢のことなんて忘れてしまった...

●2022年5月3日(祝)
笹ヶ峰駐車場 (6:55)→(登山道沿い)→黒沢出合(8:30)
→富士見平(10:25)→高谷池ヒュッテ(11:20)
→火打山(13:10)→影火打コル(13:30)
→滑走(14:00~惣兵ェ落谷)→鍋倉谷出合(14:30)
→林道出合(15:15)→笹ヶ峰(16:15)




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