2021年8月8日日曜日

神宮川(濁川)ヤチキ沢 (沢登り)

2021年の山の日は、東京2020開催の影響で8月第2週末に移動して3連休となりましたが、台風が接近してきました。

連休初日の土曜日の午前中までは天気が持ちそうなので、半日で終了できる短いコースに行くことにします。


山梨県北杜市のサントリー工場敷地の南際を流れる釜無川の支流神宮川は、山から流れ出す白砂の粒子が漂っていることから、工場建設が決まる前は濁川という名前だったそうです。


その神宮川沿いの林道の路肩からスタートします。

林道は地形図上で右岸へと渡る標高900mくらいまでクルマが走行可能ですが、路面が荒れているので標高820m付近、ちょうど連打する砂防ダムの上で左岸へと渡る橋の少し下流側から歩き始めることにしました。

この路肩スペースの横には、ボルトが打たれた意味ありげなボルダーがあります。


途中で神宮川ボルダーの"下の岩"を見下ろしながら10分も行かないうちに、渡渉点が崩壊した林道は通行止めとなります。

ヤチキ沢は、神宮川を渡ってすぐの広場の先で右岸に流れ込んでいますが、砂で埋まっており、この日は水がチョロチョロ流れているだけでした。
出合の砂の上で沢支度をします。

入渓場所からいきなり、白い岩のナメが続きます。

どれもナメと滑滝の中間くらいの傾斜で、好きなところを登って行けます。


入渓してから高度100m少々登ったころから、崩壊気味の右岸の崖に押されるような形で、水流は徐々に右へと曲がっていきます。

そして、正面に鋭く切れ込んだ枯れた谷…恐らく地形図の1146m標点の裏へと回り込んでいる沢だと思います…が見えるところで、水流は右手のスラブの岩から流れ落ちてきています。
ここが地形図では不明瞭な1140mの二俣だと思いますので、水流のある右俣のスラブへと入ります。
この沢全体に言えることですが、地形図の等高線と沢の水流が一致しないところが何か所かあり、基本的に地図を読みながら考えるよりも、素直に一番水量の多いところを登って行くのが正解です。
日向山の山頂を目指さずにガイドブック通り踏み跡から下山する場合は、高度計かGPSで脱渓場所確認のみを行い、それまでの区間は遡行に専念した方が合理的だと感じました。

ツルツルのスラブの上はアブナイので、水が流れている写真左上の溝を登ります。

スラブ岩の上のナメっぽい流れを5分ほど登ると、「く」の字状の2段8mがあります。

右側の大きな岩につかまって直瀑状の上段の下で水流を横断すると、

横切った先の踏み跡に導かれて落ち口に出ます。

ただ、直登はそれなりに高く、水をモロに被るので、直登したくない場合は右側を迂回して下の写真のルンゼ(正確にはその左端のリッジ)から巻くと、同じところに到着します。

くの字滝の上にもナメが続いています。
全て左岸から巻いていけますが、出だしは快適に直登していけます。

ですが、だんだん傾斜が急、かつヌメり気味になってきますので、右の際を行くと...

右岸にハング岩がでてきます。

沢はハング岩の下に滝で落ちてきていますが、周辺はちょうどイワタバコがあちこちに咲いている緑に包まれたほっこりした雰囲気で、ハング岩のところだけが切り立っています。

滑滝の左岸側はどこからでも巻いて行けそうですが、せっかくなので、ハング岩の下から左側を登って行きたいと思います。

ハングの下から岩盤に取り付くと、上は広いスラブのナメとなっていました。

大きなナメは、傾斜のユルいところを足場にして登って行けますが微妙にヌメり、しくじって勢いがつくと、下の方でハング岩が口を開けてまっていますので、不吉に感じたらすぐに左右どちらかに退避できるように考えながら登った方がよいかもしれません。

大ナメを登ったところで右岸から枝沢が落ちてきます。

本流のスラブ滝は流れの中が登れそうなので取り付きましたが、油が塗ってあるかと思うくらい、面白いほど滑って敗退しました。
ガイドブック通り右の乾いたスラブの中央を通る裂け目を登ります。


ハング岩から10分少々で8mの直瀑となります。

直瀑部は右脇の土砂のスカート部から取り付いてみましたが、岩がとても脆く体重をかけるのが怖くて右岸から巻きました。




直瀑から10分足らずで到着する1320m二俣は、直上する右俣が枯れており、多段滝が落ちてくる左俣へ入ります。

脱渓前のフィナーレとなる左俣の滝群は、直登できない部分は左岸を巻いて行けます。

最後のここは... 登ろうとするととても厳しいですが右岸を簡単に巻けます。

水量が急に減り周囲が開けると、1370mで右岸に明瞭な踏み跡が出現します。
水流がわずかに残る踏み跡の傍らで装備を解除し、この踏み跡を辿ることにします。

踏み跡は日向山の北東尾根の北側をトラバースしていきます。

少し崩れて白くザレたところから少し先で、ピンクテープのある日向山の北東尾根に乗ります。
ここから下るとすぐに1350m凸があります。

日向山の北東尾根には登山道のような立派な径がついており、あまりに立派すぎるため、神宮川へと下る分岐点を通り過ぎてしまい、1221.2m三角点の手前でそのことに気づきました。

慌てて引き返して1221.2m三角点のすぐ西側を北へ向かう尾根に入ります。
この尾根上にも明瞭な作業径がありますが、標高1120mのここでまた分岐があり、林道を最後までクルマで来た人は左(西)へ折れる必要がありますが、林道を奥まで走行できなかった私は、そのまままっすぐ下っていきます。


まっすぐな尾根をどんどん下っていくと、樹間からサントリーの工場が見えてくる先で一か所尾根が崩れていて、東(右)側から巻き気味に通過します。(マーキングテープがあります)


ゴールが近い標高980mくらいになると、尾根は平坦となり、地形図では表せない10メートル未満の凹凸が入り組むようになりました。

古い河岸段丘のような尾根末端にある、太古は河床だったと思われる場所に入り組んだ、通路のような、というよりも、この森で生活を営んでいた人々の通路だったであろう窪地を彷徨います。


歩いていてふと、横の段差の上にある岩に呼ばれたような気がしてたので近寄ってみると、下にクルマを停めていた路肩が見下ろせました。


●本日の反省

・バリエーションルートを、また間違えた

 下山途中で尾根の分岐に気づかず通り過ぎた。

 すぐ誤りに気付いたものの、沢以外の登山道のない山ではここ数年必ずといっていいほど間違えている。このパーフェクト状態は少々困った...


ヤチキ沢は、入渓から脱渓までナメや滝がほぼ途切れるこがなく続く、想像以上に変化に富んだ遡行していて飽きが来ない良渓だと思います。

アプローチ&下山に要する時間と遡行時間が、それぞれ2時間程度と、半日で終了できるので、時間の制約があるときにおススメしたいルートです。

丹沢や奥多摩にも似たようなルートがあるのに、わざわざ遠くまで行かなくてもいいんじゃないの という意見もあるかもしれませんが、前半の白い岩のナメの雰囲気と、今回は省略しましたが日向山山頂に立ち寄れる(すぐそばまで遡行できる)魅力は首都圏にはあまり無いと思います。...今回唯一途中で出合ったパーティーも日向山山頂に行ってきたとのことでした

今回のブログでは、沢登り以外の記述が半分近くを占めてしまいましたが、そうなったのは、遡行時間の短さによる心の余裕のためなのか、何となく全般的に漂う癒し系の雰囲気(難しいところは巻こうと思えば全て回避できる)による影響が大きかったと思います。... 大きな特徴はないもののリラックスできて、かつそれなりの充実感が得られました。人によって感じ方は違うと思うけど。


●2021年8月7日(土)

神宮川(濁川)林道標高820m路肩(7:50)

→ヤチキ沢出合(8:15;入渓)→ヤチキ沢遡行

→1140mスラブ岩(9:00)→1120mハング岩(9:25)

→1320m二俣(9:50)→標高1370m遡行終了(10:10)

→日向山北東尾根下山→(10:40)→出発地(12:00)






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