関東地方を相次いで台風が通過した2019年の夏は、台風が落とした大量の降雨により川の水量がなかなか減らない期間が長く続いています。
おとなしく家で過ごすのにも飽きた頃なので、普段は水がほとんど流れていないところに出かけてみることにします。
行き先は裏妙義の中木川・谷急沢です。
先ずは前半の右俣遡行から谷急山まで。
…後半(左俣下降)はこちら
2016年春に閉館した国民宿舎 裏妙義の駐車場からスタート。
国民宿舎跡から一旦中木川を渡り返し、ゲートが閉まる中木林道を上流に向かって歩きます。
中木川の左岸を進む林道は、歩きだしてすぐに枝沢の排水口が詰まってあふれた水が橋上を流れている以外は問題なく歩けました。
写真は星穴沢沿いの廃止された登山道の分岐。
星穴沢橋のすぐ先にある深沢橋を渡ったところにある中木川へと降りる踏み跡を下ります。
川原に降り立ったすぐ上流が谷急沢の出合で、左岸から谷急沢が入ります。
谷急沢に入って5分としないうちに、最初の滝があらわれます。
流れの左横のスタンスが豊富な岩を登ります。
滝の上の右岸には林道跡のような段丘がありますがすぐに消失し、大きな岩が転がるようになります。
それも長くは続かず、最初の滝から10分ほどで右俣と左俣の出合に到着です。
今日は右俣を遡行します。
右俣に入ると水量はぐっと減り、ナメと小さな釜が断続的に続きます。
右俣に入って15分くらいで左岸に風穴沢が入ると、右俣本流は少し狭くなってきます。
プチゴルジュといった風情のところに釜と小滝が続きます。
ただ、ゴルジュと呼ぶには両岸が切り立っておらず、開放感があり、どちらかというと癒される雰囲気です。
小滝は全て、滝というよりもナメといった方が適切な斜度で、困難なところはありません。
標高660mくらいで沢が右に直角にまがるところにある滑滝。
奥にもう一つ滝が見えます。
奥に見えた滝が、岩角を流れ落ちる8m滝でした。
なんで右の沢型ではなくて壁の途中を流れているのかよくわかりませんが、ガイドブック(「東京起点 沢登りルート120」山と渓谷社)によると、”ホールド豊富な水流右を登る”そうです。
本当に流れぎりぎりですが、たしかにホールドは豊富そうです。
それでは登ってみましょうか。
どひゃ~。
上に行くほど滝の飛沫が激しく降りかかってきます。
必至で這い上がり、水の飛散が落ち着いたところで振り返ります。
下から見た感じでは壁の途中にある樋状を流れているように見えたのですが、こっちから見ると全体的に白く泡立って水が落ちていきます。
おかげで、全身パンツの中までびしょびしょです。
8m滝の上は樋状に水が流れ落ちてきていました。
上のナメまで行って右側の谷を見ると、踏み跡らしきものが登って来ており、簡単に巻けるみたいです。
寒さに震えながら先へと進みます。
沢の横の尾根は低くなり、特に左岸は登山道まで簡単に登れそうなくらい指呼の間に近づいてきます。
そのユルい稜線の直下をこれまたユルいナメが次々と滑り落ちてきます。
まさに自然がつくったナメの登山道の様です。
傾斜が急な滝も岩が階段状となっており、簡単に登っていけます。
次々と飽きることなく続く快適な階段ナメと滑滝を辿って、あっという間に800m付近にある15m大滝まで来ました。
ここは流れの左横の階段から登り始めます。
そして、左側を水流が覆うようになるところから右側へと移ります。
滝の上は二俣状となっていますが、水流のある左へと進みます。
まだまだナメが続きます。
普段よりも水量が多いのでしょうか。足元を洗われながら瑞々しいナメを進んで行くのは爽快です。
最後に傾斜の強い大きな滝がでてきました。
ぱっと見た目、手がかりが豊富そうなので登れるところがないかを近付いてあちこち物色しますが、その間も上からシャワーを浴び続けます。
先ほど8m滝で濡れて以来、続くナメをぐいぐい登り続けてせっかく温まってきたカラダが、また元の濡れネズミに戻ってしまいました。
面倒くさいので、左岸から巻きます。
滝を登ったところは左岸から枯れ沢が入る二俣状となっていました。
ここで寒さに耐えきれなくなり、上着を脱いで濡れた服をシャツの水を絞っていると、何と下から別のパーティーが登ってくるではありませんか。
彼らには、登山道の無い山中で裸となっている自分が、さぞかし不思議に思えたことでしょう。
服を絞った二俣を左へ進むと、水が枯れるタイミングで最後の二俣となります。
ここを左へと進むと、沢は終わりとなり、尾根に登ることとなります。
登りついた尾根の上はちょうど谷急山への一般登山道(巡視道)から女道が分岐するところでした。
ここからは一旦、一般登山道を歩いて谷急山を目指します。
裏妙義の山々を背に、細い稜線上につけられた微妙な登山道を登ります。
裏妙義の山々の左手は、関東平野の北西端を渡る上信越自動車道です。
左手の岩山は山急山でしょうか。
稜線の反対側はゴジラの背中のような表妙義の山々です。
最初に谷急山が見えるようになる1100mの小ピークで一服です。
とりあえずあともう少し。
小ピークから下ると、巨岩が斧で割られたようなキレットの横を通ります。
ここを通り過ぎたところの登りが、足元がユルくてかつ、滑落すると止まらなそうで、登山道で一番コワいと感じるところです。
自分は10年くらい前に、ハイキングで谷急山を目指し、ちょうどここから、コワくて先へ進めなくなり引き返したことがあります。
なので、今日は予めチェーンスパイクを装着してきましたが、それよりも、当時と比べて登山道が歩きやすく整備されている様で、問題なく通過できました。
残る谷急山への稜線は、4回ほど細かい登り下りを繰り返しながら、時に細くなったりして続きます。
それにしてもこの山は花らしいものが全くと言っていいほど咲いていません。
登山道周辺で唯一この花だけが咲いていました。
大遠見峠から1時間20分で到着した谷急山。
足かけ十年越しの初登頂です。
妙義山の最高峰だけあって、周囲が見渡せる素晴らしい展望です。
お隣は軽井沢I.C.と高岩です。
反時計回りに南側を見ると、遠くに西上州の南牧村周辺の山々。
表妙義。
そして途中何度も見え隠れしてきた裏妙義の山々の向こうは赤城山でしょうか。
裏妙義の核心部を拡大してみます。
丁須の頭もよく見えますね。
さて、展望を満喫したので、引き返すことにします。
帰りは同じ沢の別の支流を下ります。
後半(左俣下降)に続く
●2019年10月27日(日)
元国民宿舎裏妙義(7:10)→中木林道→深沢橋(入渓: 7:50)
→谷急沢遡行→右俣(8:05)→風穴沢出合(8:20)
→8m滝(8:35)→大滝(9:05)→大遠見峠(9:53)→登山道
→谷急山(11:10)→谷急沢左俣(下降開始:
11:30)
→奥の二俣(12:00)→中俣出合(12:45)→右俣出合(13:35)
→深沢橋(13:55)→中木林道→国民宿舎(14:30)
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