2022年8月13日土曜日

小菅川本谷 (沢登り)

例年高速道路が大渋滞する山の日。

猛暑・好天が予想されていた2022年のこの日は、高速道路を利用しない近場へのお出かけを考えていたところが、朝起きてみると既に9:00を回っていました。

なので翌日への順延としましたが、飛び石連休の谷間となる翌12日の金曜日には台風が迫ってきました。


なんとかギリギリ天候が崩れない間に終了できる近場のよいところはないかとガイドブック(「東京起点沢登りルート100」(宗像兵一著・山と渓谷社))で探してみたところ、大菩薩の手前にあるアプローチ無しで行ける初心者向けのルートがあったので、サクッと行ってみることにします。

平日とはいえ、お盆休み直前の朝5:00に調布I.C.から乗った中央道は、早くも小仏トンネルや相模湖周辺で渋滞が始まっていました。
ただ、一時間単位で足止めを食うほどの酷い渋滞ではなく、ノロノロながらもおおむね止まることなく走り続けることができました。

それよりも不気味なのは、青空が見えているにもかかわらず進行方向に見える大きな虹で、先行きがちょっと気がかりです。

甲州街道から国道139号線を通り、小菅村役場の前から県道508号線(大菩薩峠線)へと進み、更にその先の林道のどん詰まりにある駐車スペースから出発です。

ガイドブックには正面の「釣り人の皆様へ」の看板から入っていくと記載されていますが、ここから一旦川まで下って行かなくてはならないことと、そのすぐ先に大きなコンクリート堰堤の巻きがあるため、体力を温存したくなり、写真右上に写っているモノラックのレール沿いを経由して、仕事径から沢へと向かうことにします。

林道終点広場が起点となっているモノラックのレールは、標高差50mほどを一気に急登して小菅川と日向沢の中間尾根に乗った後は、尾根上を進んでいきます。
尾根を進むとすぐにレールを跨ぐ木の桟道が設置してある作業径が横切るので、恐ろしく滑って危険な木の板でレールを越えて小菅川側へとトラバースする作業径に入ります。

立派な作業径を進んでいくと、小菅川のすぐそばに出るので、川原に下りれるところから入渓します。
モノラックが尾根に乗るまでの急登と、トラバースする作業径が下り基調だったため、どうやら目論んでいた登降差の節約はあまりできなかったみたいです。

入渓して50mも遡行しないうちに、赤テープが見えてきて、木の橋が川を渡り、上流の方には作業小屋だったと思われる廃屋も見えます。
どうやら入渓が少し早すぎたみたいですね。 あまり大差ないからまあいいか。

作業小屋跡からは、ワサビ田跡が散在する石ころだらけの川原を行きます。

15分ほど遡行すると、少し川原がすっきりしてきて、左岸からトリゴヤ沢が入ります。

トリゴヤ沢には、少し上流に15mくらいの滝が見えました。

その後少々の間、転石の川原を行くと、最初の滝が現れます。

5mのこの滝は、ちょっとした岩小屋がある右岸を小さく簡単に巻けます。
岩小屋の滝から標高差にして200m弱の短い区間に、この沢のほぼ全ての見どころが登場してくることになります。

先ずは、急流の少し先に二段の滝(4m+5m)が登場します。

二ついちどに右岸の巻き径から巻くと、すぐ上は6mのスダレ状の滝です。

この滝は左端の流れの中を登りました。
このスダレ状滝が、なんと今日2m以上の落差を登った唯一の場所となりました。

すぐ上は7mの垂直滝です。

滝のみを見ていると全く登れなそうですが、右側の壁の右の方に手掛かりがあります。

そして垂直滝落口のすぐ上は、2mちょっとの末広がりの滝。

振り返るとこんな感じ。

そこからさらに上を見るとトイ状の小滝です。

トイ状小滝の上は1340m二俣となっていました。
大小7個くらいの連瀑帯はここで一旦終わりとなり、少し影になったような本流の左俣へと入ります。

川原を少々行くとでてくる4m滝は、シャワーでどこからでも登れそうですが、面倒くさいので右岸を巻いて行きます。

巻き終わったすぐ先に、この沢で最大となる12m大滝が見えてきます。

大滝の名にふさわしい立派な滝で、ここも滝だけを見るとヌメって取り付く余地がなさそうですが、視界を広げると、左岸を巻いて行く踏み跡が見えます。

大滝を巻き終わったところで、この沢のメインイベントが終了となり、8割が川原歩きとなる終盤に突入することになります。
時間的にもこの辺りが中間点で、この後の標高300mほどの登りに備えるべく休憩しておくのが良いかもしれません。

あとは、ごらんの通りの石と倒木の間を歩いて行くこととなります。

標高1410~30mほどの等高線間隔が開いている左岸には、かつては貯木場だったのではと思えるような、広く平坦な場所が広がっています。
今となっては、もしもここまで来ることができる作業径があるのなら、帰路にしたいなとも思います。
というべきか、その後を知った今だからこそ、そもそもここが作業場の様に感じるのかもしれません。

単調なゴーロの沢歩くのに下ばかり見ているうちに、1450mで右岸に入る天狗棚沢を過ぎていました。

天狗棚沢出合からすぐの、左岸にハングした岩壁があるところが1510mの奥の二俣です。

左俣は少し先で4mの滝で落ちています。

遡行する本流の右俣は、ざっと御覧の通りです。
奥の二俣付近は一旦ガレが少なくなります。

そして、1550mで右岸から水量の少ない枝沢が入るところから、最後のサービス区間となり、フィナーレの石段の流れを登って行きます。

その後は途中で地図にない枯沢が左岸から、1610mで右岸から枝沢が合わさると、一気にガレの沢へと変化していきます。

そして、最後の二俣となる1650mは、瓦礫で埋まりますが、脱渓する場所は右俣のすぐそこです。

間もなく赤テープが下がる「山道」が横断するポイントに到着。
ここで沢装備を解除します。

南側の牛ノ寝通方面から降りてくる山道が明瞭に見えます。
と説明したくて撮った写真には、あまりはっきり道が写っていませんね。
このころから雨の降りが激しくなってきました。

小菅へと向かう登山道への径の写真写りは、御覧の通り明瞭です。

渓を出てから10分ほどで大菩薩峠への登山道の「ニワタシバ」表示のところに到着しました。
古い看板の下にある細い踏み跡から出てきました。下の写真の背後には斜めに「山道」の分岐を示す登山道の道標があります。
晴れた日には多くの人で賑わう大菩薩峠はすぐそこです。
天気が良ければ、登って来た山道と反対側に続いている踏み跡を登って行き、賽の河原に向かう旧峠道をあるこうかとも思ったのですが、だんだん雨がひどくなってきたので、労の割りに得るものがないと感じ、そのまま小菅方面へと下山することにします。

下山道で唯一展望が開ける「フルコンバ」から見る大菩薩嶺方面は、雲がかかって見通せませんでした。

下山に使用した「小菅大菩薩道」は大変よく整備された登山道でした。
石や木の根などの凸凹がなく、雨中でもドライな一定の傾斜で続く登山道を久々に通った気がします。
思い起こせば、先ほど通った「ニワタシバ」や「フルコンバ」が機能するには馬で物資を運ぶ=道は馬が歩ける必要があるためにこうなったのでしょうか。

車道が近づいてくるころに現れるこの標識を右斜め後ろに切り返すと、日向沢橋(日向沢を渡る林道の橋)に下山します。

林道のカーブを1回分登り返すと、出発地の広場に帰還です。

●本日の反省
初心者向けの”歩く沢”だったのだが...
滝を直登したのは1か所のみで、しかもかなりユルい場所。
その滝があった連瀑帯以外はなんと竿とストックを持ちながら歩け、さらに下山道は整備良好と、まさに『お年寄りに優しい』ところで、とても助かった。
と感じたのだが、日向沢の広場から大菩薩道の合流までの標高差が650mあり、まあそこそこの体力は必要だった。
そこから更に200m高い大菩薩峠や400m高い賽の河原に行くのをやめた理由は、雨だけではなかったかもしれない。
ただ、概ね一定間隔で滝や二俣などのランドマークが登場するためか、冗長な割りには長く感じなかった。(実際に正味の遡行時間は、のんびり歩いても三時間くらいだった)

それにしても、今年(2022年)の夏は昼からの降雨が多い。
梅雨明け以降にでかけた山では全て激しい雨に遭遇しているが、梅雨がほとんどなかったことの埋め合わせなのか、それとも今年が普通なのか?

●2022年8月12日(金)
日向沢登山口先林道終点駐車場(8:05)
→(モノレール沿い・作業径)
→ワサビ田下・山道木橋(8:40)→1340m二俣(9:45)
→1500m奥二俣(10:35)→山道出合(脱渓;11:25~45)
→ニワタシ場(登山道;11:53)
→(小菅大菩薩道)→日向沢登山口(13:21)




2022年8月1日月曜日

鶏冠谷右俣(沢登り) 後半

 奥秩父 笛吹川東沢の支流鶏冠谷の右俣を遡行した記録の後半です。

左俣と右俣の出合にある25m滝を高巻いて沢に戻ったところからです。

二俣までの本流を遡った前半の記録はこちらです。


小雨が降り始める中、二俣から右俣の左岸を大きく高巻いてきて降り立った平凡な沢を遡行していきます。

すぐに沢に倒木が詰まってきますが、突入してみると、みっしり詰まっているわけではなく、普通に遡行する感覚で通り抜けることができます。
但し、狭い空間を見通せる範囲で一番奥にある4mほどの小滝でちょっと引っかかってしました。

油断していたところに唐突に出現したため、撮影し忘れてしまい、遠方からの画像を拡大するとこんな感じです。
滝の手前に大木が立てかけてありますが、あの木はたしか滝の右側に立てかけてあったものではなかったのでしょうか?
滝に近付いてみると、右側に木が一本立てかけてありますが、落口に届く長さではなく、木を伝って上まで登っても、ツルツルの平たい岩盤のところで終わってしまいます。

仕方がないので、木が架かっていない左側から登りますが、当然上は巨岩で行く手がふさがっています。
どうしようとかと思い周囲を見回すと、滝の流れの中にバンドが横切っているので、思い切って右側へと横断してみたところ、水流は強いもののスタンスが安定しており、無事に横切ることができました。
あとはブロック状になった落口の右側をフリクションで這い上がります。

下の写真の左側の階段状の形のところから這い上がってきました。

大木がなくなった滝のすぐ先を右折すると、30m滑滝が見えます。

滝が吐き出す水煙なのか、雨脚が強くなってきたのか、はたまた先ほどのシャワーの洗礼の名残なのか、水蒸気で煙っています。

トポ通りに左岸すぐ横のルンゼから高巻くべく、正面を通り抜けて登って行きます。

一歩が微妙な泥のトラバースをえいやッとクリアし、落口へと続く踏み跡を行くと、なんと行き止まりでした。
行き止まりというよりも、そこにはヌメッたドーム状の落口の岩盤があり、一歩のフリクションでしくじると、滝の下からやり直し状態となります。

仕方ない。
踏み跡が始まるあたりにある高さ2mくらいの岩壁の安定しているところを選んでクライミングして這い上がりました。
…下の写真の岩と草の中間あたりから這って登ってきました。 ふぅ~、やれやれ。

30m滑滝の上は少々荒れ気味の感じで滑滝が続いています。
すぐ上の左岸枝沢から吐き出された瓦礫を越えるとナメが始まり、滝を交えながら断続していきます。

しかし、このナメはあくまで「断続」で、大雑把な感覚ではナメ2~3に対して残りは川原です。(いや、もう少しナメが多いかしら...ちょっと疲れてきたバイアスがかかっているかしら?)

それよりも、この赤いナメがとても滑ります。
もともと滑りやすいところに加えて、更に潤滑油でも塗ってあるのかというくらい滑るので、迂闊に足を置くと柔道の出足払いを食らったように派手にコケてしまいます。

なので、平らなナメは歩けません。
横の草付きを歩くので、ナメのご利益もありません。

そして、ナメがなくなると、廊下状の沢中を歩けるので体力的には助かります。

このくらいの斜度でも、表面の凹凸の平に近いところに足を置いて行かなくてはいけません。

そして、先ほどからぱらついていた雨は、だんだんと本降りとなってきました。
岩盤に生えている苔が開いてきれいな緑の絨毯状に変わります。

しかし、それもほんの一時。
バケツをひっくり返した豪雨となりました。

眼鏡もカメラのレンズもびしょ濡れで、明瞭に見えないのですが、遡行するにつれて沢の水音は轟々と大きくなり、心なしか水量も多くなってくるように感じます。

標高780mの右岸枝沢出合に着く頃には、視界もあまり効かなくなり、流れる水も黄土色に濁ってきました。

泥水が勢いよく流れる、癒されるにしては少々ゴツゴツ気味のナメは、相変わらず滑るので、脇の岩盤を登るのですが、そこもびしょ濡れになってツルツル化してきます。

なので、もっぱら草の生えているところか、砂利の上を歩いて行きます。

そして、右折する滑滝を越えると...

奥の左岸からちょろちょろ枝沢が流れ込むところで、沢は左折しています。

左に曲がると、奥に40m大滝が登場です。
多くの人がこの滝を見て遡行を終了すると言われているので、自分も従うことにします。

これは結構な迫力。
もう少し近寄ってみましょう。

う、うぅ~ん。
滝とは全く別のところからもたくさん水が流れ落ちていますね。
この雨、一向に止む気配がないな。

さて、先ほどの右岸のちょろちょろ沢から帰路へと着くことにします。

左曲する枝沢をこの辺りまで(標高差30mほど)登ると、ピンクテープがついているところで踏み跡が横切っています。

ピンクテープに導かれて踏み跡を右手(南東)へと歩いて行くと、シャクナゲの森へと続き...

標高950mほどの登山道に合流しました。
沢装備を解除せずに、沢と化した戸渡尾根を我慢の下りです。

標高が下がるに従い、雨は小降りとなりました。
と、思う間もなく、西沢渓谷の遊歩道に降り立った途端に爆弾の様な雨が降ってきました。


●2022年7月31日(日)
西沢渓谷駐車場(7:30)→登山道
→鶏冠谷出合(入渓;8:10~8:20)
→鶏冠谷遡行→魚留滝(8:40~9:00)
→逆さくの字滝(9:50)
→左俣・右俣出合(10:30~10:45)
→右俣遡行→30m滝上(11:45)
→40m大滝下(13:00)
→1800m左岸枝沢の1860m赤テープ(脱渓;13:15)
→甲武信ヶ岳登山道(13:45)
→徳ちゃん新道→西沢渓谷駐車場(16:05)

前半の記録(駐車場~左右俣出合までの本流遡行)はこちら



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