2024年11月12日火曜日

伊勢沢 (沢登り)

 台風被害で長い間通行止めとなっていた北丹沢の神ノ川林道は、存在すら忘れているうちに昨年(2023年)7月に通行が再開されていることに気付きました。

その後の台風で犬越路隧道付近では法面や路肩が崩落している模様ですが、神ノ川ヒュッテまでならクルマで行けそうなので、久しく忘れていた神ノ川流域へ行ってみることにしました。

国道413号線(道志みち)の青根にある神ノ川入口バス停付近にある神ノ川キャンプ場の表示に従い、県道76(山北藤野)線、通称神ノ川林道を走って到着した日陰沢橋の手前にある数台の駐車スペースからスタートです。

橋のすぐ先にあるトイレは閉鎖中で、横のゲートは開いていましたが、「Uターンできないからこの先は行くな」との表示がありました。
実際はゲートが閉まる孫右衛門トンネルの手前に2か所ほど路肩が広くなっている場所があります。
但し、帰路は風巻尾根の東海自然歩道を下って神ノ川公園橋から戻ってくるため、それより奥まで無理してクルマで進入するメリットはほぼ無いと思われます。

ゲート横にある滝を見送りトンネルを2つ抜けて、657m標点のカーブ側壁に書かれた825の暗号に背を向け、少し左側にあるロープ付きの踏み跡を下ると、大堰堤すぐ下流の伊勢沢出合に降り立ちます。

かつてペンキで描かれていた伊勢沢の文字は見当たらず、土砂が堆積してしまった出合から遡行していくと、すぐに二段の滝に到着しました。
釜の左側から緩い下段を登り、左壁にフィックスされたお助けヒモで上段を登ります。

最初の滝から30分弱くらいは、時折ナメ、たまにワイヤーケーブルが散乱する川原を歩きますが、途中で二段(といってもほぼ一段)15m滝があります。

トポにある通り、左壁を登れなくはなさそうですが、釜に落ちた時の低体温リスクを理由に、

見てしまうと滝を登る気力が消失するくらい完備された右岸巻道を行きます。


少々荒気味の川の少し先で、右岸から三ノ沢と四ノ沢が続けて入ります。

三ノ沢・四ノ沢出合の右カーブの先は樋状のナメ水路となっており、寒いこの時期は左岸側の岩の斜面をトラバースしていくことにします。

樋状ナメが終わると、左折した川原の先に大きな滝が連続して見えてきました。

奥の大滝と手前の二段15m滝です。

先ずは前衛の15m滝を登ります。
左岸斜面に巻くためのトラロープが登って行ってますが、確か滝を直接登れるはず...

というわけで、釜の右側をヘツり、一段目の流れ右端を登ってみます。

そのまま二段目も登って行くと、先の方にヒモみたいなものがついているのが見えてきました。

恐らく、さきほど左岸に見えたトラロープを登り切った下に設置してあると思われる怪しげなヒモを頼りに二段目を登り切ります。

前衛滝の落口の上には、北丹沢を代表する50mの大滝が迫ります。
手前の小滝を右岸側から小さく巻いて大滝の下へ。

これはすごい。
堂々たる風格と風圧で、近寄ると寒いのと水滴が激しいのとで上手く撮れません。
そして当然ですが、一人ではとても登れません。
なので巻いて行きますが、登るにせよ巻くにせよ、大滝がこの沢の核心です。

それでは、滝の左岸側にある小沢を登り、巻いて行きます。

目の前にあるナメ滝を登って左側に注意していると、岩壁に斜上して取り付く踏み跡があり、すぐにロープが見えてきます。

急登の途中で左手にトラバースを促すようにロープが分岐しますが、直登を選択。

また左への踏み跡が思わせぶりにでてきて迷いますが、手がかり豊富なのをよいことに調子こいてどんどん直登していくと、遥か下に左岸枝沢を見下ろす場所に登り着きました。

大滝の落口を見下ろしながら枝沢との出合に下ります。

出合に降り立って振り返るとこんな感じで、実線を下ってきました。
本来行きたかった理想の巻きルートはワイヤーケーブルがある破線の場所なので、かなり登りすぎてしまいましたね。

落口のすぐ先でこの左岸の壁を越えると、二条の滝が見えます。
滝そのものが二俣で、左が五ノ沢、右が本流です。

左の小滝を登って、滝が続く五ノ沢を見送り、本流を遡行すると、左岸から小さな滝が落ちるところで、5mスダレ状の二条滝となります。
ツルツルなので右岸を小さく巻きました。

すぐ上の7m滝は流れの左側を快適に登った記憶があるように感じましたが、とても寒そうなので、そのまま右岸を巻き続けることにしました。

巻き終わって沢に戻ると、すぐ先で左岸から小沢が滝で出合います。
この枝沢の距離にして100mちょっと上流で伊勢沢は二つに分かれます。

標高998m付近の二俣は、姫次直下を水源とする左俣を進むことにしました。

左俣は、川原を標高差100mほど登ると伏流となり、水流が復活する1160m付近で左岸から1:1の水量で滝の枝沢を合わせます。

さらに直進していくと、標高1200m付近の右岸ガレ沢出合から最後の連瀑帯となりました。

ただ、連瀑とはいえ直登できない最初の5mを巻いた後は平易な階段状でした。

稜線までの標高差は100mを切りましたが、左岸の枝沢群からは豊富な水が落ちてきます。

水流がチョロチョロとなれどもなかなか枯れない本流を登って行くと、正面に壁が立ちふさがる付近でようやく水が枯れ、登山道を歩く人の鈴の音が聞こえてきました。
左岸の小さな尾根に乗ると、すぐ上に登山道が見えました。

登山道を3分ほどで、富士山が美しい姫次のベンチに到着し、少し遅いお昼休憩。

スタート地点に戻るべく風巻尾根で下山します。
急登で有名な風巻尾根ですが、出だしは緩やかな稜線漫歩で、遡行してきた伊勢沢の谷を見下ろし、丹沢主稜の山々や富士山を眺めながら優雅なハイキングです。
袖平山を過ぎると、風巻の頭(下の画像中段右端)に向けて下って行きます。
↑檜洞丸(左)と大室山(右の枝陰)の間に富士山が見えます。

風巻の頭からは一気の急降下で、神ノ川を渡ります。
東海自然歩道だけあって、とてもよく整備された道でしたが、姫次から誰も出会わなかったな。
それに、逆方向に歩くと大変そうだな。

神ノ川公園橋の上から仰ぐ、二時間前はほぼ同じ高さに見えた大室山。

川を渡って林道に登り着くと、出発地は指呼の先でした。

●本日の反省…特になし。
・ヒルの被害を恐れているうちに10月も過ぎてしまい、11月頭の気温低下で慌ててでかけた一年以上ぶりの丹沢沢登りでしたが、気温が程よく低くて(横浜の最高気温16.5℃)、とても快適。…濡れたくなければ濡れなくてよい沢だからか。
・左俣よりも右俣の方が良い?
 10年以上前の記憶なので定かではないが、今回遡行した姫次に詰め上げる左俣よりも、原小屋平の水場に流れる右俣の方が、高度差のある滝が続いてもっとメリハリがあったような気がする。…いや、単なる勘違いか。

伊勢沢は「大滝だけの沢」と言われることもあるが、700mを越える高低差の全体に飽きることなく美景と緊張が続く、バランスが取れた良渓でした。
蛭ヶ岳の向こう側よりもぐっと人が少ないことによる、静かで落ち着いた雰囲気と合わせて、とてもGood。
でもやっぱり大滝は破格でしたが。

●2024年11月9日(土)
日陰沢橋(7:50)→伊勢沢出合(8:30)
→伊勢沢遡行→二段15m滝(9:15)
→三ノ沢・四ノ沢出合(9:40)
→大滝(巻き;10:10~10:35)
→五ノ沢出合(10:45)→998m二俣(11:15)
→左俣遡行→1170m左岸枝沢出合(12:00)
→登山道(12:45)→姫次(12:50~13:15)
→袖平山(13:30)→風巻ノ頭(14:25)
→神ノ川公園橋(15:15)→日陰沢橋(15:30)



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