栃木県の那須岳で春スキーです。
剣が峰から明礬沢へと、茶臼岳中腹から郭公沢の源頭を滑ります。
ここは那須高原道路を那須ロープウェイ乗り場よりさらに上へと進んだ終点、峠の茶屋駐車場です。
2022年春は3月20日にロープウェイが運航開始。同30日正午にここまでの除雪が完了した最初の週末にさっそくやってきました。
ちなみに、31日夜半から降雪があり、翌1日(昨日)は強風でロープウェイが運休。4月4日も降雪といった、まさに偶然。ピンポイントの晴れの日でした。
自家用車で到達できる最も高いところから、豊富な残雪の上を歩いてスタートです。
標高差150mほど登ると、登山道上の雪は消えていき、岩と泥の径を登って行くことになります。
残雪豊富な剣が峰と、筋状に僅かの雪が残る茶臼岳のコルにある避難小屋目指して茶臼岳の斜面を登って行きます。
それに対して剣ガ峰は西風で吹き溜まるのでしょうか、傾斜は急ですがほぼ一面雪が残っています。
山頂付近の雪面に走る数本のクラックが要注意なのを除けば、ここが滑走する第一候補となりそうです。
お隣の隠居倉の西には大峠を隔てて、流石山、大倉山へと続く稜線が広がります。
登るにつれて登山道が山頂の東側を回り込むようになると、今度は関東平野が広がります。
浅いお鉢の様な地形を反時計回りに進んで山頂へと向かうと、先ほどまでは周囲の山々に遮られた展望が一気に開けました。
豊富に雪が残る三本槍岳。
お隣の牛ヶ首、日の出平から南月山の向こう側は大佐飛山や塩原方面の山々でしょうか。
駐車場から2時間足らずの山頂に到着すると、360°の更なる大展望です。
絶景のハイキングを終えて峰の茶屋跡避難小屋まで戻ってきました。
北側の目の前にある剣が峰を滑るべく、登山道を朝日岳へと向かい、すぐに横切る雪渓をスキーをかついでわさわさと登ります。
本当は山頂から滑り出したいところですが、近くで見ると結構大きなクラックが何本も走っており、すっぽりはまると面倒そうなので、標高差残り30mほど手前のここからスタートすることにします。
残雪を横切る登山者がしばらく来ないことを十分確かめて...
雪渓中央の雪の色が白いところでさっそうとターンすると、なんとそこは茶色くて硬いザラメ層の上に2日前の新雪が数センチ積もったところで、スキーのエッジの力で全体の新雪が一気に吹っ飛びました。
その更に奥の方には、もはやどれがどれだかわからない会津や尾瀬、奥利根の山々が一望できます。
那須と会津の県境の山々。
ちなみに、スキー靴が重たいので念のために持参したスニーカーで来ることができました。
途中凍結している場所があり、チェーンスパイクを付けようか悩みましたが、コンディションが極めて良く、ストックを持っていればギリギリOKくらいの感じでした。
重量としてはごく僅かだったのですが、見た目のインパクトがそれなりだったので、下から登山者に見られていたら、さぞやひんしゅくだったでしょう。
ホントはそのまま本流を滑って行こうかと思っていたのですが、吹き溜まった新雪が多く、不安定そうだったので、おとなしく1本南側のこの平坦な残雪を下ることにしました。
恐らく、ここより上にも堰堤がいくつかあるはずですが、埋まっているみたいでした。
快適な疎林の沢滑走なのですが、登山道がある右岸側の壁がだんだん高くなっていくのがちょっと(というよりもとても)気になります。
登ってくるときに登山道まで登り返せそうな雪渓をいくつか物色していたのですが、上からこの壁は視界に入らなかったみたいですね。
やみくもに下る間にも沢は徐々にV字谷のような形に近付いていき、標高1550mくらいからは、徐々に沢が割れてきました。
さらに少し先で通気口のようなものが飛び出る古い路面を見つけたので、ここから登山道に這い上がることにします。
地形図にはこの明礬沢の右岸をトラバースする林道が描いてあるのをいいことに、安易に右岸斜面をトラバースしていくと、人工の構造物を発見。
ちなみに、下の写真は明らかに林道の跡の様なのですが、ここ以外には明瞭な箇所はなく、人工の構造物も上下の写真に写っている2つだけしか気づきませんでした。
そして下流からは、なにやら派手に噴煙が上がっています。
監視小屋の残骸の様なものを横目に見ながら、峠の茶屋近くの登山道に帰還します。
ちょうど峠の茶屋と同じくらいの標高から、右岸に緩く張り出した尾根状の地形を登ります。
対岸は氷瀑が懸かる崖が続きます。
先ほど登った登山道をまた登り返して、剣が峰が見えてきたここから、今度は南側にトラバースして、茶臼岳の東面、郭公沢の源頭に行ってみることにします。
さて、やってきた茶臼岳北東面です。
遠くに臨む、朝日岳からの登山者が横切って行く剣が峰の雪面にはヨボヨボで消えそうなスキーの跡が...
つい一時間前に山頂付近のたくさんクラックを間近で見た印象では、その下をたくさんの人がよく平気で通れるなという気がしないでもありません。
滑っておきながらよく言えるもんですが...
(ただ、この時点で雪温はプラスになっておらず、一週間以上まとまった降雨もないことから、危険はそう高くない様には感じます)
ここから北側の斜面は、手前の沢の下流部も含めて樹木が多いため滑走できないことを既に確かめていたので、峠の茶屋の駐車場へは、是非直上まで舌状に張り出すこの台地の上を通って帰りたいのですが...
なんと・・ 迂闊にも、テキトーにその辺に置いておいたウィペット(ピック付きストック)と片方の手袋を下に流してしまいました。
それらは表面がサンクラストした斜面をツルツルと標高50mほど滑り下り、カール状の下の方でようやく止まりました。
いやー、やっぱり登るのは大変なもんで... それにほら、またスキーとアイゼンを履き替えて、上まで行ったらもう一回戻さないといけないじゃないですか...
背後の雄大な茶臼岳の斜面としょぼい1本のシュプールに見送られながら、事前のオブザベを参考に、残された雪を拾いながらブッシュにまみれた尾根を進みます。