2021年梅雨入り直前の南東北・福島県南会津地方の只見町への旅です。
「恵みの森」は、同町布沢にある林野庁指定の郷土の森の名称で、布沢川支流の大滝沢に沿ってトレッキングコースが整備されていますが、現地に行ってみてびっくり。
森の中央を流れる大滝沢は、ところどころで少しだけ途切れるものの、一枚岩ともいえるナメの沢が3km近くも続き、その半分近くが特別な装備不要で短いアプローチで訪れることができるところでした。
まさに、ナメ床を堪能するためにあるような場所で、なんでもっと有名にならないのかが不思議に感じました。
首都圏から新潟県境の只見町へ行く道は、住む場所によって栃木経由か新潟経由かが悩ましいところですが、東北自動車道の白川I.C.から国道289号線を走り続けるか、那須塩原I.C.から尾頭トンネルを抜けて会津田島で289号線に合流するかが最速の行程になると思います。
尾瀬から流れてくる伊南川に沿って走っていると、明和郵便局の少し先にある明和橋の手前に布沢への標識があるので、そこを右折してひたすら布沢川沿いに走り続けると、転回場所がある舗装道路の終点となり、そこが森の入口となっています。
横浜を朝出発して、途中で南会津町の駒止湿原と宮床湿原に寄り道をしながら、到着したのは正午をかなり回った時間でした。
もう下山するような時刻ですが、歩くコースのほとんどはトレッキングコースで、高低差もほとんどないため、よせばいいのに決行します。
しかし、整備されているトレッキングコースとはいうものの、沢沿いの径は何度も渡渉を繰り返すもので、途中の「下の滝」からは完全に沢の中を歩くルートとなり、それなりの準備は必要です。
下の滝までの1kmほどは、こんな感じで沢沿いに登山道のような径が整備されており、ところどころに立つブナの大木を見ながら普通に歩いていきます。
ただ、こんな感じで沢を6往復半(つまり11回。たしかそのくらいだったと思います)渡渉することになります。
私は運動靴で歩いて、無事に靴を濡らさずに到着することができましたが、飛び石伝いが微妙なところが何か所かありました。
特にここは渡渉ではありませんが、右岸の30°程の傾斜の岩をヘツって通過するので、緊張してカラダが固くなると滑り落ちるところです。
そうこうしているうちに、出発から20分ほどで「下の滝」に到着です。
私はここで渓流シューズに履き替えました。
ハイキングの人は長靴をはきます。いや、最初から長靴で出発しておいた方がたぶん便利ですね。
私も最初から渓流シューズで出発するのがよかったかもね。
下の滝には左岸(下から見て右側)にトラロープが張ってあり、その先の滝の最上段には登りやすいように岩にステップが切ってありました。
そのステップを登って滝の上にでます。
まるで誰かに片づけられたように(というか、きっと地元の方々が定期的に整備されているはずです)流木が岸にまとめられています。
ここからはじまる長く美しいナメの様子は、下手な解説不要なので、基本的に移り変わっていく景色の写真だけを並べていきますね。
途中で一か所、岩で流れが隠れる場所がありましたが、岩の横を通り抜けるとまだまだナメが続きます。
「下の滝」から1km弱ほどのところで、左岸の上に「でこ岩」というランドマークがあります。
「でこ岩」から400メートルほどで、右岸から枝沢が出合う「中の滝」に到着です。
トレッキングコースはここで終了。引き返しとなります。
「下の滝」から上流は、トレッキングコースとはいえ、径は完全につながっておらず、ほぼ沢の中を歩くコースです。
もしかすると知らないだけで森の中に径はあるのかもしれませんが、沢の中を歩くことこそに価値がある場所です。
右岸枝沢の小滝の上もナメが続いている模様ですが、右俣の本流へと進みます。
中の滝は左側の傾斜が緩いところから簡単に登れます。
中の滝の上からは水量がぐっと減り、それまでの様に河床全体を覆いながら水が流れる場所は少なくなりますが、岩盤のところどころを流れる水流に独特の意匠が見られるようになります。
日の出のようなポットホール。
障子岩。いや、畳か?
もうちょっとでハート。惜しい。
これはウナギかな。
ムンクの叫びですかね。
本物と比べると似てないや。
シナイ半島だ。
標高625m付近、でこ岩から1kmくらいのところで二俣となります。
冷静に写真を見ると右の本流の方が圧倒的に水量が多く、明らかに二俣ではなく単なる右岸枝沢の出合なのですが、自分は正面の枝沢が本流だと思い左へとはいってしまいました。
なので、したの3枚の写真は迷い込んだ右岸枝沢のものです。
ここで間違いに気づいて引き返しました。
本流は小さな蛇行を繰り返しながら、相変わらずナメというか岩盤状の川床が続きます。
長いナメもついに終わりか?
と思わせる場所が数か所でてきますが…。
よいしょ と越えて先が見通せると、またナメが続いています。
標高600m付近で沢が東(左手)へと緩くカーブしてくるあたりで、ようやくナメよりも川原の方が多くなってきたように感じます。
すると、小さな滝が登場。
655mくらいの左岸にある枝沢状の地形のほんの少し先です。
滝の上を見てナメが続いていたら、また遡行していかなくてはならないので、先が見えなのを幸いに、ナメは終わったことにして、ここで引き返しました。
帰路は遡行した沢を引き返し、でこ岩の少し下流から右岸尾根に続くトレッキングコースを歩いて帰ることとします。
ワスレナグサの咲く岸辺で沢装備を解除して、トレッキングコースを尾根へと向かいます。
尾根道を1時間ほど歩いて出発地へと戻ります。
しかし、当然のことながら、往路の沢コースを歩いたほうが早くて楽です。
ここだけ来て帰るのなら、美しいブナ林に感動したのでしょうが、なんせ6時間ほど前に駒止湿原で整備されたブナの遊歩道を歩いたもので、その手軽な体験が仇となりました。
●本日の反省
出発が遅かったことに尽きます。
ここに来るまでの途中の寄り道が長すぎました。本当は一泊二日で来たかったのですが、翌日が雨予報だったものでつい... 欲張りすぎ注意。
布沢川の大滝沢トレッキングは、本格的なナメの沢歩きを手軽に楽しめるとても良いところで、もっと知られてもよい場所です。
日頃登山をしない方でも、興味があれば近所にある体験型宿泊施設「森林の分校ふざわ」でガイドツアーを申し込むこともできるみたいなので、是非ご検討ください。
●2021年6月18日(金)
恵みの森入口(13:15)→下の滝(13:35)
→大滝沢遡行→中の滝(14:20)
→625m右岸枝沢迷い込み(14:45~15:00)
→魚止め滝(15:18;引き返し)
→でこ岩(周辺散策・脱渓;15:55~16:20)
→トレッキングコース(尾根ルート)→恵みの森入口(17:15)