中ノ沢出合以降の左俣の小室川谷本流は、水量も落ち着いてきて、川原と淵と滑滝が交互に続きます。
1100mの右岸枝沢
標高1190m付近は滑滝が連続するところです。
最初の8mは左側の細流を。
その上の2段4mは左側をどこでも
1170mの右岸枝沢の滝
そして後半の見せ場となります。
先ずは10mの雨乞の滝。
右岸の巻径から巻きます。
巻径の起点は右岸枝沢が釜に入るところです。
10m滝のすぐ上は4段40mの滑滝です。
下の2段は流れの中を快適に登れます。
深い釜を持つ3段目は登れないので、
左岸を巻きます。
最後の4段目は、3段目の巻径が終了するここから真っ直ぐに落口へと向かいます。
落口付近は右側に残置ロープがあります。
足元は比較的安定していますが、多少外傾気味なのと、それなりに高いので、ロープがないとかなり緊張するでしょう。
1230mくらいで作業径が沢を渡ります。
そのすぐ上で左岸から枝沢が合流してきます。
まだ滝がでてきます。
この下段は左側の右上するチムニーを手掛かりに越えました。
上段も左のチムニー状(この写真には写っていません)を手がかりに。
この辺りから鉛色の雲が立ち込め、空が暗くなってきました。
そして、最後の美瀑。二段10m滝です。
左岸からまとめて巻きます。
これは上段です。
ここも晴れていれば大変美しいと思われますが、湿度も急激に高くなり、時折雨もぱらつき、遠くで雷の様な音が聞こえたような気がして、段々焦ってきます。
蛇抜沢出合いが近付いてくると、沢中に古い機材が転がってきます。
右岸には昔それらが使用されていたであろう、斜上する平坦地の面影が見られますが、歩いてみると崩壊が進んでおり、そんなに早く歩く役には立ちませんでした。
1390mで左岸から蛇抜沢が同水量で入ります。
この出合は地形図の合流角度とは裏腹に、何となくインゼルっぽい見た目で、平坦地もありました。
さて、小室川谷はこの後12mの多段滝を残し、妙見の頭北西側のコル目指して500mほどの標高差を上がって行きますが、見所が少ない割に長くて時間がかかりそうなのと、途中で大雨が降り出すリスクがあることを理由に、登山道が通っている右岸尾根へのエスケープを考え始めます。
登山道はいったん、下山方向とは逆の南に向かい、大菩薩峠を経由するので水平距離は長いのですが、登山道が小菅と丹波山方面へ分岐する1650mのコルまでの標高差は200m足らずで、30分もかからず到着できることと、その後も整地された道を歩け、山小屋に逃げ込めやすい安全を優先しました。
小室川谷の標高1460m右岸に流入するこの枝沢を登ります。
本流の多段滝から恐らく水平距離で200mくらい下でしょうか。
古い記録にあるフルコンバ小屋窪に相当するものかは明言できませんが、登って行くと(この名称も該当箇所が何か所かあるようですが、現在の登山道が分岐するところの)フルコンバに出ます。
枝沢は特に危険な箇所もなく、明瞭に稜線を目指し直登して行きます。
途中二俣っぽい地形が1か所ありますが、比較的明瞭な右手を選べば程なく普通の斜面となり、明瞭な踏み跡が目につきます。
踏跡はやがて平らに整地された小さな広場に着き、
そこは標柱が立つ登山道の分岐の目と鼻の先でした。
(写真右側の草の斜面を登ってきました。)
履き替えるシューズが無いので、そのまま大菩薩峠へ。
辺り一面に湯気が立ち込めます。
更に大菩薩嶺を目指して登る間にも、空はだんだん黒雲が厚く垂れ込めます。
先を急ぎますが、山頂を通過した直後に土砂降りとなりました。
「バケツをひっくり返したような」というよりも、恒にバケツの量が流れ続ける「滝の中に居るような」大雨が、丸川峠へと下る小一時間ほどの間続きました。
だいぶ小降りになってきた丸川荘 |
牛首谷の林道に出てからはゴム製サンダルに履き替えて歩く。 |
林道の横を流れる泉水谷とその支流
大黒茂谷方面への経路を横に見ながら帰路を急ぐ
前半はこちら
●本日の反省
(1)3つの無理を強行した
①通常一泊二日とされるルートの日帰り
②当日朝に気付いた局地的大雨予報
③アプローチシューズ忘れた
と書くと、ちょっとヤバい人みたいで、仮にこの状態で遭難したとしたら正直批判はま逃れられないかもしれない。
しかし、一方で、実際に遡行してみて、このルートを日帰り+ビバーク程度の軽量な装備で行動するメリットは特に安全面で極めて大きい様に感じた。
具体的には軽量化により、前半に集中する泳ぎや瞬発力を求められる場面での消耗を押さえ、冷静さや判断力を維持することと、沢内の不用意な滞在時間を減らせること(特に盛夏期の午後の豪雨による危険個所を早い時間に確実に通過することと、夜間の増水リスクを無縁にできること)は重要と感じられた。
加えて、靴を忘れた結果、豪雨で川と化した登山道を沢靴で問題なく歩くことができた。
今回の雨量は長い人生経験の中でも最大級のもので、森の中の登山道が見る見る沢登りのような流れに変わって行くのは正直驚いたが、多かれ少なかれ夕立が発生するこの時期は最初からその前提で、渓流シューズで通すのも一考だと感じた。
まあ、たまたま結果オーライなだけだったんだろうけれども。
(2)下山が長かった
最初からわかっていたことではあるが、やはり4時間半の下山は長い。
しかも、その間に大菩薩嶺登山が含まれているし。。。
上日川峠はおろか、裂石温泉からの往復でもこんな労力はかからないのではないか?
単に帰るだけの行程なのに、、、
でも、解決案が全然浮かばないんだよね。クルマ2台でどちらかをデポするにしても、そのための時間が結構かかるし。
上記を総合した結果、最初から介山荘に宿泊する計画として山小屋泊の装備で行くのが何だか楽しそうだという結論になりました。
山小屋に計画を許容していただけるかはわからないけどね。
今回、登山口の漁協のおじさん以降、大菩薩峠までの区間では誰とも会いませんでした。
そういえば、最近小室川谷に行ったという話を以前ほど聞かなくなった様な気がするのは気のせいでしょうか。
美しくワイルドで、手応えがある一方で多くの人を許容できる優しさを持つこの谷は、もっと登られても良い様に感じました。
2018年8月11日(土)
三条新橋(6:50)→(泉水谷林道)→小室川谷出合(7:20)
→(小室川谷遡行)→松尾沢出合(9:30)→中ノ沢出合(10:45)
→雨乞滝(11:40)→蛇抜沢出合(12:40)→(標高1460m右岸枝沢登り)
→フルコンバ(13:45)→(登山道)→大菩薩峠(14:25)
→大菩薩嶺(15:10)→丸川峠(16:10)→(牛首谷登山道)
→(泉水谷林道17:00)→三条新橋(18:30)