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2020年11月9日月曜日

墓場尻川 (沢登り)

今回遡行する墓場尻川は、霧積温泉の奥にある十六曲峠付近を水源として坂本宿の近くで碓氷川と合流する霧積川の右岸最大支流で、霧積ダムのバック・ウォーターに注いでいます。

古くは雄滝と雌滝という名瀑があることで知られていたそうですが、2010年に沢登りのガイドブックに掲載されて以降は、滝やナメが交互に展開される変化に富んだ沢との認識が定着し、多くの人々に遡行されています。

ただ、遡行距離がやや長く、かつクルマが一台しかない場合の回収が面倒で、さらにヒルの被害も多いため、なかなか好機を見つけられなかったのですが、秋の冷え込みが早い2020年に、紅葉狩りを兼ねて行ってみました。


ここは国道18号線の坂本宿から県道56号線を霧積温泉へと向かう途中にある霧積ダムの奥です。

ダムを過ぎてから最初の橋の欄干には「泉橋」と書いてあり、この下を墓場尻川が流れています。

橋を渡った先。下の写真の背後の路側に数台が駐車できるスペースがあり、その対面から墓場尻川沿いに林道が伸びています。

到着すると、ちょうど二人組のパーティーが支度を終えて同じルートへと出発するところでしたので、あいさつをしてこちらも準備を開始します。

今日はこれから、この二人に追いつき・離されながらの一日となります。


先ずは駐車場所のそばから始まる林道をほんの少し歩いてから適当に左側へと下り、泉橋の上からも見える最初の堰堤の上に降り立ちます。

堰堤上の土砂堆積を過ぎるとすぐに、ナメと釜があらわれるようになります。

遠くナメの奥の方に滝のように見えるのは石積の堰堤でした。

途中クランク状のところにあるゴルジュ状地形は、左岸を簡単にヘツります。

すると間もなく、最初の滝らしい滝。2段4mが登場します。

流れの左側を簡単に越えることができるのですが、水流のないところを濡れずに越えることは簡単ではありません。
この日は冷え込みが激しく、要所は全て巻いて濡れない遡行を目指していたのですが、初っ端から下半身が水浸しとなりました。
オマケに流れの中のホールドを掴んだ右手の袖口からも水が浸入。

しかし、ここからが濡れない遡行の本番です。
気を取り直して平らなナメを行きます。

ナメはこの川で川幅が最も狭くなる手前で右折して終了します。
この狭部は、全身で突っ張ってブリッジで越えることができますが、ノーリスクで通す本日の方針とは少々異なるため、巻きを優先します。

左右どちらからも巻けますが、沢に戻るのに懸垂する可能性がある左岸は却下し、より安直な右岸の土斜面を登ります。

巻いている途中から歩いてきたナメを振り返ります。

土の斜面を登るとすぐに出てくる踏み跡を行くと、そのまま上流にある堰堤を巻く踏み跡に合流します。
この湯ノ沢第二堰堤は二連となっており、手前の低い方はそのまま踏み跡を使って横切りました。

二段目の堰堤は、川の規模と比較してとても巨大で、右岸側から巻きます。

巻くのは堰堤にくっついているこの階段?からですが、一段の高さが1.2~1.3メートルくらいでしょうか。
階段だけではとても登れずに、側面の斜泥面とセットで登っていきます。

堰堤の上は、堰堤の高さの堆積物が溜まった平地が続きます。

やがて長い平地の先に6mの滑滝が見えてきました。

この滝は流れのすぐ右側の岩を登ることができますが、取り付くまでに下半身が濡れそうなのと、岩が結構脆いのとウワサがあることから、さっそく巻くことにします。

右岸すぐ脇にあるこの溝から巻いて行きます。

それでは出発。

溝はすぐに箱状の大岩で塞がれますので、右折して枝沢に入ります。
ナメ状の岩のすぐ先に踏み跡が見えてきますので、そこを辿って右へと上がると、

本流と枝沢の間の小尾根に乗りますので、この斜面を下って元の川へと戻りました。

川へと降りたところは、標高700mほどでしょうか。
右岸から2本続けて枝沢が合流してきます。

この川は谷が深いところがほとんどないため、濡れそうなところはほぼ全て横の段丘を使い、流れを見下ろしながら巻いて行けます。

標高730mほどで左岸の小さな枝沢の先の奥まったところに巨大チョックストーン(CS)が登場します。

ここは左岸を斜上する明瞭な踏み跡でパスしていきます。

こんな感じでCSを見下ろしていきます。
巻き終わったすぐ上は、昔林業で使われていたのでしょうか、広場となっており、沢登をせずとも何だかここまでやって来れそうです。

それにしても、期待したほどの紅葉はありませんね。
まだ時期が早いのでしょうか。それともモミジ類のような紅葉が鮮やかとなる木がそもそも生えていないのかもしれません。

短いナメと川原を歩いて行くと、間もなく三俣に到着です。

これは、これから遡行する左俣で、4mほどの小滝で落ちています。
小滝の右岸から簡単に入っていけます。

これは右俣。

そして真ん中の中俣は滑滝で落ちています。
今回はこの写真左側の緩斜面を登って左股へと入りました。

左俣に入るとすぐに、この沢の核心部である三連の滝が見えてきました。

この最下段は流木沿いの右を。上の二段は左から登るそうですが、本日のテーマは「巻き」ですので、何も考えずにさっさと巻いて行きます。

巻くのは、滝のすぐ右側にある、倒木と泥が溜まったこの窪地です。
上部の木が生え始めるあたりで、薄い踏み跡を左側へと行くと、懸垂下降で戻る滝の上部が見下ろせるようになります。
登りすぎ注意。

上にたどり着いたら、先行する二名がちょうど川へと戻るべく懸垂を始める姿が見下ろせました。
自分も続くべく、同じところまで下ります。

下降の支点から見下ろします。
彼らが使用した支点は、信頼に足る強度が期待できる木の中で最も下にあるものでしたので、自分も使用させていただくこととします。
本当は、とある理由により、もっと下から下降を開始したかったのですが....

下降を始めると案の定、ロープが足りずに、地面まであと数メートルのところで宙吊りとなってしまいました。
下の写真の下部に写っている白い岩壁の上くらいの位置です。
以前訪れたときは、ここは落ち葉が堆積した土混じりの壁で小さな木も生えていたような気がしたのですが、それはとっくの昔の話で、今となっては足掛かりがほとんどないツルツルの壁となってしまいました。
仕方がないので、ぶら下がったままロープをほどき、壁にズリ落ち気味に2mくらいの高さから飛び降ります。
30メートルのロープしかないとこのようなことになるので、もっと長いロープを持っていくか、最初から長さが足りないことを織り込んだ心の準備をしておきましょう。

巻いてきた三段の滝の釜を見下ろします。
ここを登って来れれば、ロープの心配は要らないのですが....


三段の滝から上は、川が右折してから小滝を数個越えるとナメとなります。

三俣の上流なので水量は相当減りますが、しばしの間ナメの岩盤を歩いて行きます。

やがてナメが少なくなり渓相が普通の沢へと戻る頃になると、雌滝が現れます。

約12mの落差を持つ雌滝です。

左横の岩壁を登って越える人も居る様ですが、右岸に明瞭な踏み跡がついています。

こんな感じで巻いて行きます。

雌滝の上は、流れが単調となるのに加えて、随所に人工物が現れて一気に人間臭くなってきます。
ちなみに、下の写真の奥に写っているのは滝ではなく石垣の堰堤跡です。

そして雌滝から歩くこと十分少々で、前方に巨大な雄滝が見えてきました。

雄滝は1040mのこの左岸枝沢のすぐ上にあります。

前衛の小滝を越えて近寄ってみましょう。

雄滝は右横の斜面をこんな感じで登って巻いて行きます。
若干急なところがありますが、手掛かりは豊富です。

落ち口の高さまで到達してからもどんどん登ります。

先行する二人はどこかから左の方角へと消えていき、沢へと戻ったようですが、自分は上に林道があることと、傾斜が緩んで登りやすくなったことを理由に、安直にどんどん登ります。

そして間もなく、林道よりも下を並走する作業径跡のような地形に到達。
左手に沢を見下ろしながら、この踏み跡のようなところを上流側へと進むと....

径跡は沢に人工物がある場所へと降りるので、ここで装備を洗って林道歩きに切り替えます。

装備解除した場所からは、作業径跡を辿って林道に上がり、旧碓氷峠目指して荒れ気味の林道を歩きだします。

旧中山道への登山道が分岐する少し手前にゲートがあり、そこから碓氷峠側はクルマが通れるくらいに路面が回復します。
この林道を反対方向へと行くと、霧積温泉へ行けるみたいです。

そしてすぐに、熊野神社(旧碓氷峠)と坂本宿(途中から旧中山道経由)への径が分岐するところに到着します。
同じ川を先行していた二人がこの標識の前に立っていました。
彼らはここから「坂本宿」への径を行き、クルマを回収するとのことです。

自分は、せっかくの機会なので熊野神社にお参りをしてから帰ることとし、お互いの無事を祈って彼らとはここでお別れします。
熊野神社へは、これまで通りの車道が続きますが、突然「安政遠足」なる看板が登場します。

二人と別れてから、観光客で賑わう熊野神社へは1kmほどです。

階段を登り、随身門をくぐったところにある拝殿(本宮)には賽銭箱が二つ並んでおり、その後方にある社殿も二つです。
二つの箱の中間が群馬県と長野県の境界なのでしょうか?
右奥の唐破風は群馬県側の熊野神社新宮。左奥の簡素な大社造の屋根が長野県側、熊野皇大神社の那智宮です。

那智宮の先の売店の奥には、注連飾りをつけた大木「しなの木」が立っており、参拝客が皆くるりと一周廻っているので、自分も同様に一周します。
この木は樹齢約千年で、縁結びのご神木として信仰されているとのことです。
太い幹に一か所貫通している穴がハート型に見えるのがその謂れの起源なのかはわかりませんが、20年以上前に結婚した自分にはあまり関係なかったか....

皇大社の方は全国で4社しかない「特別神社」の1つとのことですが、他の3社(御嶽神社2社と富士山稲荷神社)の人達はそのことを知っているのかしら?
と思いつつ、帰るべく旧中山道の起点へと向かいます。

旧中山道はここまでやって来た林道の途中から右手へと下る荒れ気味の歩道で始まりますが、先ほど分かれた二人が下った登山道が合わさると、かつては自動車も通行できたのではと思われるくらいの立派なハイキングコースとなります。
そしてここにも「安政遠足」の看板が。。

要所に過去のうんちくが書いてある看板も完備されています。

そして、下るにつれて木々が美しく色づき始めます。
途中に廃屋や投棄物も多少目に付くものの、歴史の風情があり、傾斜が少なく良好に整備された素晴らしいハイキングコースではありませんか。

ただ残念なことにこのハイキングコースを最後まで下ってしまい、碓氷湖や坂本宿まで行ってしまうと、クルマを停めた霧積ダムの奥まではかなりの遠回りとなってしまうため、途中から旧中山道を外れて霧積ダム方面へとショートカットしなくてはいけません。
地形図の909m標点・中山道が分岐する手前にある「栗が原」の看板のすぐ手前(ちょうど振り返って、尾根の右(南)側を下って来た中山道が尾根に乗った、下の写真の右側のところ)から北側へ下っていく尾根を行くことにします。

石製の境界標がある意味ありげな小尾根を下っていくと、すぐに崖の上にでるので、スリップしないようにできるだけ崖に近寄り...

ロープで岩壁を下ります。
ロープの長さが30mよりも長ければ、危険を冒してギリギリまで崖に近寄る必要はないのですが....

崖の下は、まっすぐ下らずに、写真左手の植林の尾根についている作業径で下山します。
途中漫然と下っているうちに、標高750m付近で正面の支尾根に間違って入ってしまい、慌てて引き返しました(正解の尾根は左手の一段下へと続いています)が、きちんと地図を読めば問題ないところです。

最後は県道と少々並走しながら、泉橋の数百メートル坂本宿側に降り立ちます。

思ったより距離が長かったように感じました。
神社に寄り道したからそう感じたのでしょうか?


●2020年11月8日(日)

泉橋(霧積ダム)(7:20)→墓場尻川遡行→堰堤(8:05)

→三俣(9:40)→左俣→三段の滝(9:4510:20)

→雄滝(11:30)→林道(12:0012:20)→(林道経由)

→熊野神社(13:1013:30)→旧中山道

→人馬施行所跡(13:45)→尾根下降開始 (14:30)

→泉橋(16:00)




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