春が訪れる頃に会津の山に行くと、会津駒ヶ岳から北の中門岳へと続く稜線の白さがひときわ印象的です。
駒ヶ岳や大戸沢岳からその大福餅を並べたような稜線を眺めると、いつも一か所シュプールが刻まれている場所があり、ちょっと気になる存在でした。
春が早くやってきた2023年の3月に気になる場所に行ってみることにしました。
ここは福島県南会津郡檜枝岐村の村営グラウンドです。
道の駅「尾瀬桧枝岐」の奥(村役場側)200mほどの国道352号線沿いにあります。
3月下旬のこの日はまだグランドは使えず、除雪された駐車場には他県ナンバーのクルマだけが止まっていますが、その台数も春山ピークシーズンの二割程度でした。
全面雪に埋もれた林道が上ノ沢を渡る橋からは、滝沢登山口の路側駐車場へと沢沿いにショートカットし、登山口の階段を登ります。
恐らくこのくらいの積雪であれば、登山道の左側(路側駐車場の正面)にある冬ルートの沢にも雪がつながっていると思われ、そちらを登ろうかと迷ったのですが、今日は山頂から先へと行きたいため、なるべく手堅く登山道を刻んでいくことにしました。
ブナの尾根を登ること2時間近く、標高1700mくらいから徐々に周囲の展望が開けてきますが、疲労が徐々に溜まってくるここからがキツくなってくるところです。
上下動をなるべく避けて体力を節約するため、登山道をショートカットして源六郎沢の源頭を山頂方向へと横切ります。
左後方を振り返って小屋が見えるところからは直登一気で山頂に到着。
多くの登山者に踏み固めていただいた立派なトレースを辿る大名登山でしたが、長かった。
右手前の三岩岳から坪入山、高幽山、丸山岳、そして只見の山々へと連なって行きます。
振り返ると、左の大戸沢岳からの稜線と、右の大杉岳への稜線との間に登って来た尾根が見下ろせ、その先には黒々とした奥鬼怒の山々を経て、遥か関東平野の雲を堰き止める奥日光の山々が見えました。
その右手には、尾瀬から奥利根、越後にかけて豪雪の山々が連なります。
そして、越後三山の右側には、北の中門岳へと純白の稜線が伸びています。
首都圏の雨予報からは想像できない好展望です。
白根山、燧ヶ岳と至仏山、平ヶ岳、越後三山
この稜線からは、右手の御神楽沢源流の谷に向けて、中門岳とその手前にある2094m標点から一本づつなだらかで真っ白な尾根が伸びており、それぞれの尾根にいくつかの支尾根があります。
その中で、2094m標点から(御神楽沢の1750mの滝付近へと)下る尾根についている矢印の一番太い支尾根には、春の好天の日にシュプールがついていることが多いですが、今日はまだ誰も滑っていないみたいです。
それでは、最初のトレースを刻むべく向かいましょう。
駒ヶ岳山頂から尾根を滑り、最初の2100m凸までのちょっとの間をスキーを担いで登ったら、一つ先の凸から対岸の大戸沢岳・三岩岳の方向に伸びている尾根へと滑り込み、そのまま派生するお目当ての尾根へと滑って行きます。
やってきた会津駒ヶ岳とはしばしお別れです。
御神楽沢の谷底めがけて平均で22°くらいの斜面を滑ると、眼下に見下ろす大戸沢岳山腹の樹林に飛び出すかのような気分です。
それはまあ気にせずに対岸の山々を見ながら快適な滑走を続けていくと...。
対岸に這い上がれないような傾斜の谷底が見えてきてびびります。
その一方で、谷が近づくにつれて傾斜はどんどん急になり、到着する先が見えません。
右手の奥に対岸の傾斜が緩いところが一か所見えますが、そこへと向かう足下は雪庇状に雪が張り出していて、毎年4月上旬頃に地表から雪が崩落する場所なので、行くにはリスクが高すぎます。
左側にある小さな木の列に沿って恐る恐る滑って行くと、真下に平滑な雪面を発見。
徐々に視界が広がり、安全圏に入ったところで滑ってきた尾根を振り返ります。
滑っていた後半は緊張しましたが、こうやってのんびり振り返ると、なかなか壮観ですね。
さて、帰るべく駒ヶ岳山頂付近を目指して登り返していきます。
のんびりとした風景とは対照的な、足枷を引きずるような我慢の登行が続きます。
沢が深くなる手前からは、右岸の斜面をトラバース気味に滑って往路の登山道に合流します。
アンテナ跡を過ぎてからは徐々に狭くなる尾根をキックターンを交えながらズルズル滑走し、一旦スキーを担いで登山口の階段を降りたら再びスキーを着けて国道まで滑って終了しました。
帰着した村営グラウンドの駐車場は空っぽでした。
あきらめて時間は気にせずに、カメのように登っていると、右側の駒ヶ岳の雪庇が徐々に見えてきて、稜線に到着しました。
山頂から大戸沢岳へと続く稜線上の、すぐ東側にある最初の小さな凸とのコルです。
ここからは、みんなが滑って帰る源六郎沢の源頭へと滑って行きます。
疎林をかわしながら沢へと滑っていくと、右の方からたくさんのシュプールが合流してきます。 じゃなくて、自分が合流していきます。
みんな早いのね。
●本日の反省
御神楽沢への滑走は、ちょっと判断を誤るとアブナイところかもしれませんが、なにはともあれ、無事に終了できて何よりでした。
滑っている途中は何が出てくるのか気が気ではなく、滑るのを楽しむどころではない状態でしたが、もしかするとそれが楽しめた核心?
御神楽沢の左岸には、2094m標点と中門岳の北北東にある1988m三角点からそれぞれ北東に向けて尾根が伸びており、今回は前者から東側へと派生する尾根を滑ったことになりますが、御神楽沢内の1750m標点に向けて少し傾斜が緩くて100mほど標高差の大きなメインの尾根をそのまま行くのもありだと思います。
中門岳も含めてそれ以上北側を滑ると、登り返す先は大戸沢岳かその北側の1918mコルが自然と感じられ、そこから東側(中ノ沢・桑場小沢・東尾根など)を滑走すると、いつかは行きたい雄大な周回ルートとなります。
下大戸沢のスノーシェッドから帰る方法を考えておく必要があるかもしれませんが。
●2023年3月21日(祝)
村営グラウンド(7:30)→滝沢登山口(8:00)
→ヘリポート跡(9:00)→会津駒ヶ岳(12:00)
→2094m標点東側の尾根滑走(12:50)
→御神楽沢源頭(13:00)→駒ヶ岳南の片(14:30)
→ヘリポート跡(15:00)→滝沢登山口(15:30)
→村営グラウンド(16:00)
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